子育てや家事を親に手伝ってもらえるうえに、生活コストを低減させられる……そんなメリットから、二世帯住宅での親との同居を決断する人が増えています。しかし、安易な親との同居は大きなリスクが伴うと、長岡FP事務所代表の長岡理知氏はいいます。いったいなぜでしょうか。本記事ではKさんの事例とともに、二世帯住宅の落とし穴について解説します。
「同居の義父の豹変」で中学生の息子が自殺未遂…世帯年収1,060万円、40代・中学校教員夫婦が陥った「二世帯住宅」の落とし穴【FPが警告】 (※画像はイメージです/PIXTA)

近年再注目される「二世帯住宅」

核家族化、少子化、ダブルインカム、高騰し続ける不動産価格などの影響から、二世帯住宅が再び注目を浴びています。しかし、昭和スタイルのそれではありません。建物の構造を完全分離とせず、それぞれのプライバシーを確保しながらもLDKを共有するという緩い間取りが人気を集めています。

 

昭和時代の同居のあり方とはまったく異なり、父母と子供世代夫婦が対等に生活をし、お互いにメリットを享受するという意識が強くなっているのです。子世代夫婦は子育てや家事を親に手伝ってもらい、生活コストを低減させられる。親世代は孫と毎日会うことができ、老後の手伝いを子供世代に期待できる……このような現実的なメリットを想定しています。

 

しかしながらその理想とは裏腹に、決してすべての家庭が同居を成功させているわけではありません。メリットを享受するどころか、わずか数年で絶望的に家族を破壊してしまう人も少なくないのです。筆者のもとに相談のあった実話をもとに、二世帯住宅購入の前に知っておくべき注意点を解説していきます。

※ご本人の了解をもとに一部脚色してご紹介いたします。

40代共働き夫婦、子育てを協力してくれる「夫の両親」との同居を計画

<事例>

 

夫M 43歳 公立中学校教員 年収540万円

妻K 42歳 公立中学校教員 年収520万円

長男S 15歳

夫の父 67歳 年金生活

夫の母 65歳 専業主婦

 

MさんとKさんの夫婦は、東北地方で中学校の教員をしています。世帯年収は1,060万円。公務員ということもあり、収入は安定しています。しかし問題はその多忙さ。朝7時前に家を出て、帰ってくるのは20時過ぎ。部活や行事が重なると土日も出勤せざるをえません。長男がいるものの、幼稚園のころから送り迎えは、近所に住む妻Kさんの母親に頼っている状態でした。

 

しかし、5年前にKさんの母親が急逝。父親はすでに離婚していなかったため、子供の世話を頼む人がいなくなってしまいました。そんなとき、夫のMさんから住宅を購入しないかと提案があったのです。夫の実家を建て替え、二世帯住宅にして同居するのはどうか、という話でした。

 

子どもの学区は変わらないし、夫の母親は専業主婦であるため、小学校の息子の帰りを待ってくれて面倒も見てくれるとのこと。しかも父親が建築費のうち2,000万円を出してくれるという話になっているようです。

 

「悪い話ではないな」と思った妻のKさん。

 

2,000万円を義父が負担し、6,700万円で「二世帯住宅」を購入

忙しいなかでなんとか時間を作って住宅メーカーに行き、二世帯住宅を契約しました。資金計画は実家の解体費を含めて6,700万円。うち2,000万円は義父が出し、残り4,700万円は夫が単独債務として住宅ローンを借りることにしました。

 

完成したのは200坪の敷地に延床面積75坪という堂々たる建物です。階上と階下で世帯をわけ、LDKを共有し食事は一階という生活スタイルにしました。

 

当時、義父はまだ63歳。大手企業で部長職に就き、毎日多忙にしていました。同居の最初は気配り上手の義母が家事のほとんどを取り仕切り、妻のKさんは仕事に専念できる状態でした。部活の試合で日曜日に出勤するときは、子供を連れてショッピングモールで遊んでくれます。義父はKさんに「いまは女性もバリバリ働く時代だ、先生としてのキャリアを大切にして将来は校長を目指しなさい」と言ってくれていました。義父母は非常に協力的です。

 

「世間では二世帯住宅での失敗談をよく聞くけれど、私たちにそんな話は無縁。この同居は成功だったな……」とKさんはすっかり安心していました。

 

――しかしその蜜月も義父の定年退職すると同時に終わりを告げます。