どんな勝負事にも「攻め」と「守り」があり、その両方がそろっていないと勝率を上げることはできません。そしてそれは、株式投資においても同様です。本記事では、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、株式投資における「守り」の戦術について解説します。
株の「儲け」に目が眩んだとき、投資家が思い出したい〈守りの戦術〉とは?【株式投資のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

守りの戦術①「現金を多めに残す」

強いインフレが起きていない限り、現金を持っておくことで損をすることはありませんが、その現金で株式を買うことで、どうしても損をする可能性が生まれてきます。

 

もちろん、誰しも株価が上がることを想定して株を買う訳ですが、株で損失を被る可能性はゼロにはできません。言い換えれば、そのリスクを負わなければ、株式投資などできないということです。

 

ただ、買った株が値上がりして資産を増やせることも多々あります。だから多くの人が株式投資をするのです。

 

ですから、株を買うのが「攻め」、現金を残すのが「守り」という認識を持っておくとよいでしょう。すべての現金を株にするのは「攻め100%」であり、一切株を買わないのが「守り100%」です。

 

一般的には、その間のポジションをとって株式投資をするものです。

 

その時々の状況に応じて、どの程度攻めるか・守るかをコントロールしていくのが、賢明な株式投資といえるのではないでしょうか。

守りの戦術②「配当目当ての銘柄を買う」

特殊なケースを除き、1年間に配当金で稼ぐことができるのは株の買値の10%未満です。配当利回りは3%以上であれば高めといわれますし、4~5%を超えれば「高配当利回り」ともいわれます。

 

一方、株価の値上がりによって売却益を得る場合は、数十%稼げることが珍しくありません。場合によっては、買値の何倍もの売却益を得られることさえあります。

 

ですから売却益狙いで株式投資をする人が多いのですが、これが「攻め」の戦術です。一方、「守る」戦術とは、売却益にはあまり期待せず配当目当ての銘柄を買うことといえそうです。たしかに数十%もの売却益が得られそうな銘柄は魅力的ですが、一方でそれは、数十%の損失を被る可能性も秘めているのです。

 

しかし配当ならば、権利付き最終日まで保有していれば必ず手に入ります。そして、株価がどんなに下がっても配当で損失を補うことも可能です。

 

たとえば、配当利回り5%の株を買い、1年間保有して株価が10%下がってしまったとします。しかしそのうちの5%分は配当で補うことができるので、実質の損失は5%となる、という具合です。同様に、3年間で15%値下がりした場合は、配当も「5%×3年=15%(減配・増配は考慮せず)」で、実質の損失はゼロになります(以上の例は、税金を考慮していません)。

 

株価が上がった場合は、配当分を利益として積み増すことができます。また、仮に株価変動による損益がない場合でも、配当分は必ず利益となります。

 

もちろん、株価の上下や売却益のことを完全に無視する必要はありません。しかし、過度にそこに期待しすぎず、「最低でもこれぐらいの配当がもらえる」ということを出発点として株式投資をすることは、強力な「守り」になるのではないでしょうか。