会社員が収入を増やすためには、「副業・兼業に励む」「給与の高い会社へ転職する」のほか、「職場で実績を挙げて出世する」という方法があります。今回は、出世をめざして奮闘し「部長」の座に登り詰めたサラリーマンの給与事情をみていきます。
“やりがいが大事”とか、言ってる場合じゃなかったな…52歳・中小企業部長を呆然とさせた、大企業エリートとの〈給与格差〉 (※写真はイメージです/PIXTA)

頑張って手に入れた部長の座…大企業と中小企業の間にある「顕著な差」

ただ、一口に「部長」といっても、性別や企業の規模によってその給与事情はさまざまです。

 

たとえば男女別の給与差をみていくと、男性の部長(平均年齢52.7歳)の月収は59万3,100円、年収は926万円。女性の部長(平均年齢52.1歳)は月収52万100円、年収785万円と、同じ「部長」であっても男女間で140万円ほどの年収差が。また、同じ「男性部長」だとしても、高卒の場合は月収49.31万円、年収751万円であるのに対し、大卒の場合は月収63.5万円、年収1,000万円。最終学歴の違いにより、年収にして250万円ほどの差があることがみて取れます。

 

最後に、男性・大卒・部長の待遇を企業規模別に比べてみると、従業員10~99人の企業の場合(平均年齢52.7歳)、月収は51万7,200円、年収は756万円。従業員100~999人の企業の場合(平均年齢52.7歳)、月収は63万2,500円、年収は980万円。従業員1,000人以上の企業の場合(平均年齢52.8歳)、月収75.6万円、年収は1,269万円。

 

同じ「大卒の部長」でありながら、中小企業と大企業では500万円もの年収差が生じることになります。

 

あくまで平均値ではありますが、従業員規模100人未満の企業で部長の役職に登り詰めても、年収は750万円。もちろん、求められるミッションや背負っている責任の大きさに差はあるでしょうが、給与水準は従業員規模1,000人以上の大企業でいえば係長とだいたい同じ年収水準であることに、ショックを受ける人も多いのではないでしょうか。

 

さらに中小企業と大企業では、定年退職時に受け取れる「退職金」にも顕著な差が現れることになります。

 

一般社団法人日本経済団体連合会『2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果』によれば、大学卒・総合職・60歳定年の人が受け取る退職金は平均2,440万1,000円。高卒・総合職で2,120万9,000円。高卒・大卒を問わず、大企業に勤めてきた人は、2,000万円ほど受け取れると考えてよさそうです。一方、東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)』の「モデル退職金」をみると、中小企業では大卒の定年退職者の退職金は1,091万8,000円、高卒の場合は994万円ほど。中小企業の場合、受け取れる退職金の額は大企業の半分程度ということです。

 

昨今の「賃上げ」に関する報道をみても、恩恵を受けているのは大企業ばかり。給与の差は今後も拡大の一途をたどるともいわれています。

 

現役の会社員にとって、起きている時間のほとんどを費やすことになる仕事。大企業と中小企業の間の如実な給与差を目の当たりにしてもなお、「給与より、やりがいが大事」と言い切れるのであればそれ以上に素晴らしいことはないでしょう。

 

ただ、がむしゃらに「やりがい」を追い求めて部長の座に就いた結果、50歳を過ぎてから「給料、これだけ?」と慌ててみても、老後の資産形成はもはや手遅れになってしまうかもしれません。30代~40代前半のうちから老後のマネープランも考慮して、「いまの職場で上の役職をめざす」のか、あるいは「給与水準の高い会社への転職」に向けて動き出すのか、一度、検討してみる必要があるのかもしれません。