32年末には分譲マンション260万戸が「築40年」以上
日本は人口減少期にあり、これから家余りの時代が到来することが確実視されています。ただ、日本には根強い「新築信仰」があるといわれ、マンションにおいても中古よりも新築を好む世帯が多いようです。
そんな背景から増え続ける分譲マンション。最近、そうしたマンションの老朽化が問題視されています。
大規模な修繕や建て替え、取り壊しが必要な水準に達しているにもかかわらず、打つ手がなく荒廃したマンションは増え続けており、国土交通省の調査によれば、22年末時点で築40年以上のマンションストック数は125万7,000戸。2032年末にはこれが260万8,000戸にまで増加するといいます。
その要因の1つが、入居者の高齢化。新築分譲マンションの場合、入居者は家族構成含めて似たような世帯が多くなります。そのため新築で購入してから数十年後、入居者も同じく年を重ね、あたりを見渡せば高齢者ばかりというマンションが多いのです。
国土交通省の調査によると、マンションの建て替えが行われるのは平均して築37年。前出の調査とおり、取得者の平均年齢である40歳前後でマンションを買ったとしたら、70代後半から80代。収入は年金に限られるというケースが多く、そんな時期に追加の修繕費納入を求められても、簡単に首を縦に振る訳にはいかないでしょう。
また取り壊しや建て替えとなると、一時的または恒久的にほかの住居へ移る必要がある訳ですが、高齢者が賃貸契約を結ぶのは簡単ではなく、「建て替えなんかせず、いまのままでいいですよ」となりがち。
マンションの建て替えを行う場合は区分所有者の5分の4、取り壊しを行う場合には全員の同意が求められる、というのが現在のルールですから、上のように考える高齢の入居者が増えたマンションでは、これだけの同意を取り付けるのは難しいのが事実です。このままでは荒廃したマンションが増加し続けてしまうため、現在、建て替えや取り壊しの決議に関する条件の緩和を含む区分所有法改正の議論が進められているところです。
新築時にはピカピカだったマンションも、数十年もの時間が経てば当然老朽化していきます。
そのときに、入居者の同意が得られずに建て替えができない事態に直面し、引っ越そうにも「高齢者だから」と部屋も借りられず、やむを得ずそこを終の棲家とする……こんな悲しい結末を避けるためには、購入しようと検討しているマンションの長期修繕計画が現実的なものであるか、購入前にしっかりと確認することが重要です。