都心の新築マンション価格が高騰を続けています。マンション価格高騰の要因の1つになっているのが、都心に続々と誕生している「タワーマンション」ですが、“億超え”が当たり前の都心タワマンを買っているのは、富裕層や投資家だけではありません。本記事ではCFPの伊藤貴徳氏が、タワマンを購入したAさん夫婦の事例とともに、住宅ローン返済プランの注意点について、解説します。
栃木から上京の世帯年収1,400万円、30代パワーカップル「夢のタワマン」購入も…ジム解約→河原をランニングの節約生活へ。無謀すぎた「住宅ローン返済額」【CFPが解説】  (※写真はイメージです/PIXTA)

完ぺきな返済プランのはずが…1年後に「返済比率10%アップ」

「ボーナスで返済を補うことで、毎月の負担をなるべく少なくして無理なく返済していこう」という考えのもと、返済を続けていましたが、購入から1年後、返済計画に陰りが見え始めます。Aさんのボーナスが一部カット……加えて奥様の妊娠が判明しました。

 

「いざローンの返済が始まり、実際に口座から引き落としが始まると、思った以上に貯金残高が増えていかないのと、ボーナスの返済額が高かった……と感じています」

 

「思った以上に、普段の生活費をボーナスに頼っていた部分があったようで、それがローンで消えていくことになり、貯金への影響が大きいんだと思います」とAさん。

 

「この1年で環境も少々変わりました。会社の業績の変化でボーナスの額が少し減りました。一番大きな変化は、妻の妊娠です。現在は産休に入っています。妻は子供がある程度大きくなるまで、育児は自分で行いたいという強い思いがあり、このままだと育休明けに退職を考えているようです。そうなると今後の返済計画が大きく変わっていきます……」

 

<現在の返済状況>
・毎月の返済額        20万8,666円
・Aさん夫妻の手取り月収 約60万円
・返済比率         約35%

 

Aさん夫妻は、ここ1年の状況の変化により、返済比率が10%も上昇していました。加えて、ボーナス減による負担増も響いてきているようです。

家を買ったその先のライフプランを考える

パワーカップルのペアローンは、お互いにローン返済額に対する負担が大きくなりがちです。そのため、これからの将来、収支に影響を与えるイベントを考えておくことが大切です。

 

妊娠、出産による休業・退職転勤、転職による給与の変動病気、ケガ等による収入減家族の看護、介護による支出上記は一例ですが、不測の事態となっても余裕のある返済計画を立てることが望ましいです。

 

また、変動金利を選択する場合は、金利の上昇による返済額の増加にも注意するべきです。『国土交通省令和3年度民間住宅ローンの実態に関する調査』によると、変動金利を選択する割合が70.0%と最も高くなっています。

 

確かに、現在のような低金利時代では変動金利のように、なるべく低い貸出金利を選ぶ方が多いのもうなずけます。注意すべき点は、変動金利は市場の金利の上昇によっては、返済時の金利も上昇し、返済額が増える可能性があるということです。一般的に変動金利は半年ごとに見直され、かつ一度に前回条件の25%以上は上昇しない仕組みとなっています。

 

収支バランスが変化したAさん夫婦、どう対処する?

この1年で状況が変わり、これからの生活に焦りを抱いていたAさんでしたが、この先のライフプラン表を作成してもらいました。もちろんAさんの奥様にも同席してもらい、2人の意見をすり合わせるところから始めます。

 

すると、奥様が育児に専念したいと考える期間は案外短く、収入・貯蓄のバランスを考えると、なんとか職場復帰までのあいだの収支バランスは黒字を保てることが判明しました。将来的には2人目のお子様の教育資金の準備まで問題なさそうです。

 

「漠然とした将来の不安が膨らんでしまっていましたが、いざお互いの意見を擦り合わせて可視化することで、落ち着いて状況を整理することができました。妻の職場復帰までは、削れる支出を無理なく削っていきたいと思います。まずは、月2万円のジムを解約して、マンションの前の河原をランニングしようかな」

 

直近の状況の変化により不安を覚え、今後もずっと悪い方向へ進んでしまうのではないかと考えてしまう方はいらっしゃいます。そんなときだからこそ、家族やパートナーとの将来のすり合わせを行い、今後の方向性を再確認することは重要です。

 

三大資金と呼ばれる住宅・教育・老後には、大きなお金がかかります。人生の節目にはライフプランニングをはじめとした将来の設計を、大切な方と一緒に行っていただきたいと思います。

 

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表