自国通貨がこんなに弱くなっているのは、世界でも「日本」と「トルコ」だけ
実際に「実質実効為替レート」の影響として、私たちが実感するのは「輸入品」。円の力が低下すると、海外からモノを輸入する際のコストがアップ。輸入価格が上昇します。その冴えたるものが、いま話題になっているガソリン価格。経済産業省が30日発表した、8月28日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は、前週調査より1円90銭高い185円60銭。2008年8月に記録した185円10銭を超え、過去最高値を更新しました。
そして輸入品といえば、今年は11月16日の木曜日に解禁となる「ボージョレ・ヌーヴォ」。最近は落ち着いた感がありますが、この日だけは「せっかくだから」とワインを口にする人も多いのではないでしょうか。この調子だと「今年は高いから……パスっ」と、盛り上がりにかけるものになりそうです。
世界的な物価高に資源高。どこも大変だ……と、多くの日本人は考えがちですが、「実質実効為替レート」に注目すると「実は日本だけ⁉」ということが明らかになります。
国際決済銀行(BIS)が公表している、各国の「実質実効為替レート」をみていくと、63ヵ国のなかで「実質実効為替レート」がここまで低下しているのは珍しく、日本に近い状況にあるのは「トルコ」(74.2)のみ。この2ヵ国だけが、ある意味、特別な状況下にあることが分かります(関連記事:『世界63ヶ国「実質実効為替レート」の推移…負け組は〈日本・円〉と〈トルコ・リラ〉だけ』)。
【主な国の実質実効為替レート】
米国:106.2
英国:110.3
日本:74.3
カナダ:102.0
フランス:97.5
ドイツ:101.2
イタリア:101.1
中国:91.1
韓国:97.9
ロシア:94.1
低所得者や収入が限られる年金生活者にとって、物価高の影響は大きく、「もう限界です……」という嘆きが聞こえてきます。
一方で内閣府『令和5年 経済財政白書』で「物価や賃金が上昇傾向にある現状を四半世紀にわたったデフレから脱却する好機」と記されるように、日本は苦しいながらも岐路に立っています。いまは「物価高>賃上げ」の状況で、生活苦が一層深刻になる状況下にありますが、企業の賃上げ強化の動きがより強まれば「物価高<賃上げ」となり、消費も増加。
①企業は毎年価格を引き上げ
→②生活者の生活費は毎年上昇
→③労働者の生活費補填のため相応の賃上げ
→④企業は人件費が増えた分、価格転嫁
→①に戻る
そんな好循環が生まれたら、強い円の復活のきっかけになるとされています。