一家の働き手が亡くなってしまった際に、遺族が受け取れる「遺族年金」。特に子供がいる家庭では、学費や生計を立て直すための頼みの綱といえるでしょう。しかし、ある一定の条件を満たしていなければ、遺族年金を十分に受給できないケースもあります。本記事ではFP1級の川淵ゆかり氏が、Aさんの妻の事例とともに、遺族年金の注意点について解説します。
愛する夫逝去…39歳妻に告げられた“非情な年金額”。思わず覚えた年金事務所への殺意「これでどう生きていけと?」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

長男の高校卒業とともに遺族年金はゼロに…

さらに毎月約8万5,000円の遺族基礎年金もお子さんが高校を卒業までのあいだだけ、というのもAさんの奥さんの頭を悩ませています。

 

「息子を大学に進学させてやりたいのですが、一番お金のかかる時期に遺族年金がなくなってしまうのは本当に厳しいです。息子には苦労をかけますが、加入している学資保険だけでは足りませんので、夫の生命保険をできるだけ手を付けずに息子の進学費用に充てるしかありません」と、Aさんの奥さんはいいます。

※遺族基礎年金の「子」とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方を指します。

パート・アルバイトの社会保険の加入条件が拡大

Aさんが勤めた会社が倒産した直後は、ご夫婦2人とも短期でのアルバイトやパートで終わるだろうと思っていた奥さんですが、ご主人様の突然の死亡と少ない遺族年金のため働き続けることになってしまいました。Aさんのパート先も2022年10月の改正で加入対象となり、パート従業員も社会保険に加入することになりました。

 

 

「結婚したときは自分が働くことなんて夢にも考えたことがありませんでしたが、自分が働きに出てみると、いまは本当にいろいろな多くの女性が働いているのがわかりました。子供には子供の人生があるし、私1人で自分の人生を考えていかないといけませんので、あと20年は働き続けないといけません。保険料の支払いは大変ですが、厚生年金に加入して自分の年金を増やせることはとても重要だと感じました。肉体的にはキツい仕事ですが、職場では友達もできて通うのが楽しみになってきました」とAさんの奥さんはいいます。

 

ほんの数年で人生が大きく変わってしまったAさんの奥さんですが、最近はやっと前向きになられたようで、本当によかったと感じています。

 

(ご本人の了解を得て、脚色して記載しています)

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表