ローン完済後も、マイホームを「終の棲家」にするために必要な出費が
ただ、繰り上げ返済などを行って4,000万円弱の住宅ローンを65歳までに完済できたとしても、その後、マイホームにお金がかからない訳ではありません。
戸建ての場合、新築から15年も経てば修繕が必要になります。家の規模にもよりますが、職人を呼び、足場を組んで屋根・外壁の全面的な塗装を行えば、100万~150万円ほどの費用がかかります。ローンの返済期間中に1度か2度は、メンテナンスのために、住宅ローンの返済とは別に100万円単位の出費を覚悟しなければならないのです。
さらに、マイホームを「終の棲家」とするのであれば、老後に向けた「バリアフリー化」のためのリフォームも視野に入れておく必要があります。
前出の国土交通省の調査でリフォームの項目をみてみると、リフォーム実施世帯の世帯主としてもっとも多いのは60代以上(53.7%)。世帯の内訳として「高齢者のみ」の割合が47.5%に上ることから、子が独立し、高齢の夫婦2人の暮らしを見据えてリフォームを行う世帯が多いことがわかります。
次いでリフォームを行った世帯に「リフォーム後の高齢者対応設備の有無」を尋ねると、「手すりがある」は25.4%、「段差のない室内」は15.1%、「車いすで通行可能な廊下等」は11.0%、「浴室・トイレの暖房」が21.9%。また「すべてを満たす」が4.0%でした。
高齢者向けのリフォーム費用は、手すりの設置のように数万円~数十万円で済む軽微なものもありますが、段差の解消や浴室・トイレの高齢者向けの改築など大規模な工事を要するものだと、数百万円の費用がかかります。これら高齢者向け設備を「全部盛り」とすれば、総額1,000万円以上の費用がかかることも覚悟しなくてはならないでしょう。
そう考えたくなるのも、当然といえます。しかし、「これくらいの段差で躓くことなんてないだろう」と軽視してリフォームを行わずにいると、将来、後悔することになるかもしれません。
2015年からの5年間、東京消防庁管内で転倒が原因で搬送された高齢者は27万3,491人。このうち「居室・寝室」(2万2,902人)、「玄関・勝手口」(3,187人)、「廊下などの通路」(2,342人)と、自宅で転倒したという人の数は非常に多いのです。また厚生労働省の調べによると、要介護になった原因の3番目には「骨折・転倒」がランクインしていることから、高齢者の転倒→骨折は、現役世代のそれとは比べ物にならないほど重大であることがわかります。
リフォームの出費を惜しんだために、自宅で転んで要介護になってしまっては本末転倒です。大切なマイホームを「終の棲家」とするためには、身体がまだまだ元気に動くうちから、段階的に高齢者向けの住まいの環境を整備していくなど、ローン返済と並行して、備えを進めておくことが必要なのかもしれません。