年を重ねていくと、誰もが介護のリスクは高まります。通常は配偶者や子どもたちが支えてくれますが、子どものいない夫婦の場合、身近に頼れる人もいない……そこで老人ホームへの入居を決める人も多いですが、スムーズにいかないケースも。みていきましょう。
年金月31万円・80代夫婦…夫死亡後、妻〈高級老人ホーム入居を検討〉も人生最後の大騒動「まさか、なにかの間違いでは」 (写真はイメージです/PIXTA)

増加の一途をたどる「子どものいない夫婦」

――子どもがいない夫婦って勝ち組ですよね

 

以前、そんな書き込みが話題になりましたが、勝ち組か負け組かはさておき、「子どものいない夫婦」は増加傾向にあります。

 

国立社会保証・人口問題研究所『出生動向基本調査』で「出生子ども数が0人の結婚持続期間15~19年の夫婦」の割合についてみていくと、2021年調査で7.7%。20年あまりで4ポイントほど増えています。結婚20年目以降に子どもが誕生するケースはゼロではありませんが、かなり数は少ないので、この数値が子どものいない夫婦の割合といっていいでしょう。

 

【出生子ども数が0人の結婚持続期間15~19年の夫婦の割合】

1977年:3.0%

1982年:3.1%

1987年:2.7%

1992年:3.1%

1997年:3.7%

2002年:3.4%

2005年:5.6%

2010年:6.4%

2015年:6.2%

2021年:7.7%

 

出所:国立社会保証・人口問題研究所『出生動向基本調査』

 

望んでいたのか、望んでいなかったのかは別として、「子どもがいる夫婦」と「子どものいない夫婦」、経済的な余裕という面でみていくと、当然、子どものいない夫婦に軍配があがります。

 

仮に20歳から60歳まで正社員の平均給与を手にして働いたとすると、男性の生涯年収は2.2億円ほど、女性は1.7億円ほどになります。子どものいない夫婦は、妊娠・出産によるキャリアの中断、収入の減少がないので、生涯年収も高くなるでしょう。

 

また65歳から手にする年金額は、国民年金は満額支給だとして、単純計算、男性は16.9万円、女性は14.4万円となり、夫婦で年金月30万円。ライフスタイルによりますが、年金だけで十分暮らしていける金額です。現役中はもちろん、現役を引退した後も経済的な余裕は、子どものいる夫婦と比べると、圧倒的といえるかもしれません。

 

しかし、どんな幸せな夫婦であろうと、パートナーとの別れは平等に訪れます。総務省統計局『令和2年国勢調査』によると、妻と死別した夫は全国で125万6,939人、夫と死別した妻は全国で463万0,725人。60代を迎えたころから死別を経験する妻の数がぐっと増え始め、80代前半では100万人に迫るほどに(図表)

 

出所:総務省統計局『令和2年国勢調査』より作成
妻を亡くした夫、夫を亡くした妻の年齢別推移 出所:総務省統計局『令和2年国勢調査』より作成

 

女性のほうが男性よりも平均寿命が6年ほど長いこと、そもそも男性が年上の夫婦のほうが多いことから、パートナーとの別れを経験するのは妻のほうが圧倒的に多い、という結果になります。