毎年10月に改訂される「最低賃金」。昨今の物価高などを受けて、過去最高の大幅アップとなりました。世界と比べると「最低賃金は、まだ上げることができる!」と声高らかに主張する専門家もいますが……みていきましょう。
都道府県「最低賃金」最新ランキング…「1位・東京」と「47位・岩手」、格差は〈1時間220円〉 (写真はイメージです/PIXTA)

世界主要国の賃金格差をみていくと…

最低賃金の引き上げで期待されるのは、地域間にある賃金格差の是正。一方、フルタイム従業員の平均賃金を100としたときの最低賃金の比率を鑑みると、まだまだ最低賃金は上げることができるという専門家も。

 

OECDの資料によると、世界32の主要国のうち、最もフルタイムと法定最低賃金の差が小さいのは「コロンビア」で、「フルタイム=100に対して最低賃金=89.8。先進7ヵ国に限ると、最も差が小さいのは「フランス」で、「フルタイム=100に対して最低賃金=60.8」。日本は「フルタイム=100に対して最低賃金=45.6」で、32ヵ国中27位。世界的にみても格差は大きく、まだまだ上げられる余地があるといいます(関連記事:『世界主要国「賃金格差」ランキング』)。

 

【世界主要国「最低賃金水準」トップ10】

1位「コロンビア」89.89%

2位「コスタリカ」87.92%

3位「チリ」71.98%

4位「ニュージーランド」70.47%

5位「ポルトガル」66.33%

6位「トルコ」65.21%

7位「メキシコ」63.03%

8位「スロベニア」61.69%

9位「フランス」60.89%

10位「韓国」60.86%

 

出所:OECD(2022年) 資料:GLOBAL NOTE

 

最低賃金の引き上げは、私たちの給与アップにもつながることなので大歓迎といいたいところですが、手放しに喜べるかといえば微妙のようです。

 

東京商工リサーチによると、最低賃金の上昇に何らかの対策を取ると回答した企業は61.0%と6割に達しましたが、11.2%と、10社に1社は「できる対策はない」と回答しました。

 

また「最低賃金の引き上げを許容できるかどうか」には、企業の規模や業種などによって大きくばらつきがあり、たとえば業種でみてみると、「農業」については41.6%、続く「娯楽業」は38.4%の企業が「許容できない」と回答しています。

 

さらに「どのような対策をしているか」に対しては、「価格やサービスの価格に転嫁」が最も多く、36.3%。物価高が私たちの生活を苦しめていますが、今回の最低賃金の大幅アップは、さらなる物価高を招く可能性もあります。特に収入が年金だけという高齢者の場合は、現役世代の賃金の引き上げによって生活苦という、本末転倒な事態になる場合も。

 

プラスにもマイナスにも影響がありそうな、今回の最低賃金の大幅引き上げ。まずは私たちのさらなる給与アップに繋がるのかどうか、注意深くみていく必要がありそうです。