最近よく聞く「老害」という言葉。職場にいる「老害上司」に辟易した経験がある人もいるかもしれません。ただ、虚しいことにそうした上司の給与はなかなかの額のようで……。本記事ではFP1級の川淵ゆかり氏が、データや事例ととともに、職場に存在する老害上司の実態について解説します。
全然働かないくせに…年収450万円の35歳・平凡サラリーマン、聞いて虚しい〈50代・老害上司〉の「衝撃給与額」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローンに子どもの教育費…定年後も「辞められない」老害上司

なお、定年後の再雇用制度により会社を辞めない60代もいるようです。

 

定年後の再雇用

定年後の再雇用とは、これまで勤務していた会社を定年退職後に同じ会社で新たな雇用契約を結んで再度働くことです。

 

定年後の再雇用は、高年齢者雇用安定法で定められています。企業は従業員が働くことを希望すれば、当該の従業員を65歳まで雇用し続けなければいけません。さらに、令和3年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法では、上記の「65歳までの雇用確保(義務)」に加え、「70歳までの就業確保(努力義務)」も加わりました。これにより、今後も70歳まで会社で働き続ける人も増えてくるでしょう。

 

定年退職後も働き続ける60歳のBさん

結婚年齢の遅れにより、60歳になっても「子どもの大学費用がかかる」とか「住宅ローンが残っている」といった人が増えてきました。そのため、定年退職後も会社で働き続ける人は増えています。Bさんもその1人でした。

 

運送会社の物流管理課の課長であるBさんは、今年60歳で定年退職を迎えます。定年退職といっても、住宅ローンはあと10年も残っているし、子どもも大学生になったばかりのため、まだまだ働き続けなければいけません。

 

「住宅ローンを組んだときは、途中で繰り上げ返済をして定年退職までに完済しようと思っていましたが、不況でボーナスがカットされたり親の病気があったりで簡単にはいきませんでした。再雇用といっても収入は3割ほどダウンしてしまうし、このままだと70歳まで働かないといけないんじゃないか、と思います」とBさんは言います。

 

優秀な60代も「老害」と呼ばれる60代も、会社側からすると再雇用を希望されれば簡単に拒否することはできせんし、Bさんのように辞めたくても家計の事情で辞められない人もいます。

 

厚生労働省令和2年版「厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える」より引用
[図表2]婚姻年齢の推移 厚生労働省令和2年版「厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える」より引用

 

高年齢者雇用安定法は年金の開始年齢と深い関係があります。平成25年4月からの厚生年金の支給開始年齢の引上げにより、60歳の定年退職以降は無年金・無収入となるケースが生じる危険性があるために65歳までの雇用確保が義務付けられました。今後さらに年金の開始年齢が引き上げられるようなことがあれば、高年齢者雇用安定法がまた改正され、企業側の高齢者雇用の負担が増えると思われます。

 

若い人からは「老害上司」と陰口を言われる50代・60代の上司も「24時間戦えますか?」が流行った時代を頑張ってきた人達です。どうしても苦手に感じるのであれば、上手に受け流したり、適当に距離を置いたりして接し方を考えるのもコミュニケーション能力のひとつだと思います。

 

会社には若い人はこれからも毎年のように入ってきます。自分も同じような年齢になったとき老害上司と呼ばれないようにしましょう。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表