レバレッジをかけて行うFX取引には、ポジションに対して口座残高が少なくなった際に強制的に損失を確定させる「強制ロスカット」という仕組みがあります。損切に慣れていない投資家は、これを避けるために、損失が発生しているタイミングで追加入金をしてしまいがちですが、この行為は損失をさらに拡大させるリスクを孕んでいます。本稿では、テクニカル分析の解説サイト『テクニカルブック』を運営する株式会社アドバンの代表取締役・田中勇輝氏が、FXで1,200万円を失う苦い経験をした山田健太さん(仮名)の事例を基に、失敗を回避するためのポイントについて解説します。
FXで1,200万円溶かした41歳・ベンチャー役員「人生で一番反省しています」…〈地獄への入り口〉はどこにあったのか? (※写真はイメージです/PIXTA)

「追加入金」による損失先延ばしの危険性

山田さんは投資資金が600万円のところから、短い期間で1,200万円という大きな損失を出すことになってしまいました。

 

理由はシンプルで、一時しのぎのために追加入金を繰り返してしまったからです。

 

FXのように投資資金よりも大きい金額の取引ができる取引では、保有するポジションに対して口座残高が少なくなったときに強制的に損失を確定させる仕組み(強制ロスカット)が存在します。

 

山田さんはこれを嫌って、追加入金して口座残高を増やすことで、強制ロスカットされないようにしていました。

 

ただ、追加入金をすれば強制ロスカットはされませんが、さらに損失が拡大する可能性が出てきます。

 

実際に山田さんのケースでも、追加入金せずに最初の段階で強制ロスカットされていれば、損失は70万円程度で済んだはずでした。ところが追加入金で損切りを先送りしたために、損失が1,200万円にまで膨らんでしまったのです。

 

このように、山田さんが大きな失敗をした原因は、相場の流れが大きく変わったときに、追加入金によって損失確定を先延ばしにし続けたことでした。

 

これは、投資家が大きな失敗をする際によく見られるパターンでもあります。

失敗の二大要因は「相場急変」と「損切りの遅れ」

23年8月に独自に行った投資損失に関する調査で、過去最大の損失を出した取引における失敗の原因に関する質問の回答結果を見てみましょう。

 

 

1位は「急激な相場変動に対応できなかった」で37.4%、2位は「損切りが遅くなってしまった」で36.7%となっています。なお、3位の「相場を見ていなかった」は14.4%で、2位からは大きく差が開いていることがわかります。

 

この結果からは、大きな損失が発生する背景には、「相場急変」と「損切りの遅れ」の二大要因があることが読み取れます。山田さんのケースのように、この両方が同時に起こったときには、損失が急激に拡大することもあるため注意が必要です。

 

なお、二大要因のうち「相場の急変」は、トレーダーが避けるのが難しいところがあります。

 

ある程度は予想することができても、相場をコントロールすることはできないからです。その一方で取引のタイミングはトレーダーが自分で決められるので、まずは「損切りの遅れ」に適切に対処するのが効果的かもしれません。