少なからぬ人が「融資を断られた」経験をしている
総務省『家計調査 家計収支編』(2022年)によれば、世帯年収700万円台前半の世帯における世帯主の給与は平均月41万5,512万円。平均的なサラリーマンよりも給与は高めですが、数千万円のマイホームをキャッシュで買える人は稀で、多くの人は住宅ローンを活用します。
しかし、誰もが希望通りの融資を受けられる訳ではありません。
前出の国土交通省の調査によると、少なからぬ人が、「融資を断られた経験」をしていることがわかります。内訳をみると、「融資額の減額等をしなければ融資不可と言われた」が注文住宅で9.6%、分譲マンションが4.9%。「融資は一切できないと言われた」が注文住宅で6.7%、分譲マンションが3.7%となっています。
「融資できない」理由としては、収入関連の項目が多いのは当然ながら、「年齢」「他の債務の状況や返済履歴」「勤続年数」「健康状態」など、多岐にわたります。ただ、なにか特定の理由があるというよりは、金融機関は「総合的に判断して、あなたには貸せません」と判断していると思われます。
【希望通りの融資が受けられなかった理由(上位)】
◆注文住宅購入者
・年収:39.4%
・年齢:26.8%
・勤続年数:18.3%
・他の債務の状況や返済履歴:14.1%
・返済負担率:11.3%
◆分譲戸建て購入者
・勤続年数:33.3%
・年収:27.8%
・年齢:27.8%
・他の債務の状況や返済履歴:22.2%
・業種、勤務先の規模(資本金、従業員数等)、わからない:11.1%
◆分譲マンション購入者
・健康状態、わからない:23.1%
・年収:15.4%
・年齢:15.4%
・他の債務の状況や返済履歴:15.4%
住宅ローンの「仮審査」と「本審査」…金融機関はどこをみているのか
住宅ローンの審査は、「仮審査」と「本審査」の2段階にわかれています。
第1段階の「仮審査」で落とされてしまう要因としては、ローン完済時の年齢が、金融機関の上限年齢を超えていることや、収入が不安定であること、勤続年数が短いことなどが挙げられます。また、他社での借り入れが多い場合も、「仮審査」に通りづらくなってしまいます。
続く「本審査」には、金融機関に加えて住宅ローンの保証会社が加わり、購入しようとしている物件の担保価値なども併せて厳格に審査します。2~3日で結果が出る「仮審査」よりも長い時間を要し、場合によっては結果が出るまでに1ヵ月程度かかることもあるといいます。
この間にカードローンによる借り入れや転職など、年収や信用情報に影響するような行動をとると、本審査をパスできなくなってしまう可能性が高まるため、注意が必要です。
審査に落ちてしまった場合、返済能力を裏付ける書類として、「納税証明書」や「預金残高証明書」を追加で提出してみるという方法があります。また、転職したばかりで勤続年数が足りない場合は、「職務経歴書」が返済能力を証明するための武器になるかもしれません。
また、保証会社を通さずに、金融機関がリスクを引き受けて独自に貸し付けを行う「プロパーローン」を利用するという選択肢も考えられます。金融機関の独自基準で審査を行うため、保証会社による審査をパスできなかったという人も通過できる可能性があります。
ここまで、審査の内容や通過する可能性を上げるための方法についてみてきましたが、審査に落ちるのは、金融機関が「返済能力に不安がある」と考えているということ。基準を緩めて誰にでも貸してしまえば、金融機関にとっては債権が焦げ付くリスクが高まりますし、借りる側も将来的に苦しむ可能性が高いのです。
審査に落ちてしまうことは残念ですが、「住宅ローン破産」に陥るリスクを回避できたと思えば、むしろ「融資を断られて良かった」とポジティブに捉えるべきなのかもしれません。