統計データが示す貧困層の「栄養バランスの偏り」と「肥満率の高さ」
もちろん、上記は全員に当てはまることではない。しかし、筆者の偏見ではないことを示すために、統計データを示したい。まず、[図表1]を見てほしい。
食生活を「穀物摂取量」「野菜摂取量」「肉類摂取量」の3種類に分類したものだが、低所得の人ほど、穀類(米やパンや麵)を主とした炭水化物の摂取量が多く、逆に野菜の摂取量が少ないのがわかるだろう。
こうしたことが起こる原因は、階層によって食習慣が違うためだろう。富裕層の人々は小さな頃から食費より栄養バランスのことを考えて、いろんな料理を満遍なく食べてきた。だから大人になっても、バランスを大切にして食事をする。だが、貧困層の人々はそうした習慣がないので、エネルギーはとれていても、バランスが偏る傾向にある。
こうした食生活は貧困層の人々の健康に少なからず影響を及ぼす。たとえば、[図表2]を見れば、所得が低ければ低いほど、肥満になりやすいという現象が起きているのがわかるだろう。
野菜や魚などを均等に食べる人と、から揚げやラーメンばかりを食べる人とでは、肥満率が違ってくるのは当然だ。
さらにいえば、肥満は高血圧、動脈硬化、糖尿病、月経不順、それに大腸がんや乳がんなどのがんを生み出す要因となっている。また、安価な食材には健康に悪い物質が含まれているリスクも高い。生産の過程で大量の除草剤、害虫駆除剤、防カビ剤、肥育ホルモン剤、着色料、防腐剤などが使用されていることがあるからだ。
先に、筆者は日本では富裕層と貧困層とでは口にする料理にそこまで大きな違いがないと述べた。だが、バランスのいい食生活を送れているか、安全な食材を口にしているかといったことは別の問題であり、その点においては階層による差が多少なりとも現れるといえるのである。
石井 光太
ノンフィクション作家