法律の規制がない「家賃保証会社」による取り立て
病気や怪我などが原因で就労できない期間が長く続けば、家賃滞納状態に陥るケースもあるかもしれません。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会による賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』によると、21年度に2ヵ月以上の家賃の滞納があった世帯は、首都圏で0.3%。およそ300件に1件という水準です。
1ヵ月の家賃滞納であれば「払い忘れ」も考えられますが、2ヵ月以だと困窮に陥っている可能性が高く、家賃の不払いが常態化しやすいといわれています。
家賃滞納が続けば、「強制退去させられる」「連帯保証人に迷惑がかかる」「ブラックリスト入りする」などと、想像するだけで冷や汗が出るような事態になります。「なにか事情があるかもしれないのに、“強制退去”なんて残酷だ!」と声をあげてみても、家賃収入で暮らしている大家にとって、家賃滞納は死活問題ですから仕方ありません。
家賃滞納のリスクに対応するため、多くの大家は保証会社と契約をしています。入居者が、入居時に支払う初期費用のなかに「保証費」というものがあり、家賃滞納が発生した際には保証会社から大家に家賃相当分が支払われることになるのです。これにて大家の収入はこれで補填されることになりますが、保証会社は滞納分の家賃を回収するために、入居者に苛烈な「取り立て」を行います。
—「サラ金で借りてくるとか、いろいろあるでしょ」
こんな電話が夜中にかかってくることも。
貸金業者、つまりライセンスを持って貸金業を営んでいるクレジットカード会社や消費者金融が債権者に取り立てを行う場合、深夜・早朝に電話をしたり、職場に押しかけたりという行為は法律で規制されています。しかし、家賃保証会社の取り立て行為について、直接取り締まる法律は現状ありません。そのため、警察に相談しても何もしてくれないといいます。
弁護士に相談して裁判を…家賃を滞納しているのに、裁判を起こせるほどの余裕がある人はいないでしょう。国土交通省『家賃債務保証の現状』によると、家賃債務保証をめぐる消費者からの相談件数は、年間600~700件。これは表面化している相談件数ですから、実際にはこの何倍、何十倍もの激しい督促が行われていると思われます。
家賃の滞納が続くと、法律などお構いなしに、保証会社の激しい取り立てに遭うことが予想されます。
そうした事態に陥らぬよう、入居時には勤務先や収入の状況についての審査がある訳ですが、会社の倒産や病気・怪我などのハプニングは誰にも予想できません。家賃の支払いがギリギリだという人は、払えているいまのうちに、少し家賃負担の軽いところに引っ越して、手元に現金を残しておくとか、収入を増やすために転職を検討してみるなどの対策を講じる必要があるでしょう。