30年ローンを組んで注文住宅を購入した39歳のサラリーマン。ローンの完済時期は70歳手前を予定しており少々不安ですが、この先も順調に昇格・昇給していけば「まぁ、なんとかなるだろう」と考えています。思惑通り50代で部長になったとして、住宅ローンの返済に本当に問題はないのでしょうか。ローン返済期間に訪れる2つの「収入減」に焦点をあてて、考えてみます。
39歳・大企業係長のマイホーム購入…69歳で完済予定の住宅ローン〈3,700万円〉に戦々恐々 (※写真はイメージです/PIXTA)

平均39.5歳・年間174万円のローン返済で「注文住宅」を購入

5年に1度行われる総務省の『住宅・土地統計調査結果』(2018年)によると、日本の持ち家率は61.2%。最近では「賃貸派」の人が増えているとの見方もありますが、統計をみる限り日本人にはまだまだ「持ち家志向」が強く根付いていることがわかります。

 

国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』をみてみると、新築注文住宅の世帯主(一次取得者)の平均年齢は39.5歳。40歳を前に、平均して3,800万円、期間33年ほどの住宅ローンを利用してマイホーム購入を検討するのが一般的になっています。

 

【新築注文住宅(一次取得者)の購入資金とローンの平均】
・購入資金:4,713万円
・自己資金比率:20%
・住宅ローン:3,772万円
・返済期間:32.8年
・年間返済額:174万円
・返済負担率:18.8%
・ローンタイプ(上位3タイプ)
・変動金利型:75.7%、固定金利期間選択型(10年以下):8.3%、固定金利期間選択型(10年超):6.1%

出所:国土交通省『令和4年度住宅市場動向調査』より

 

この平均像をみると、年収に対する年間の返済額の割合である返済負担率は20%未満ですから、世帯主の収入だけでも十分返済していけるプランを組んでいる人が多いことがわかります。

 

ただ十分に注意しておくべきなのが、住宅ローンを返し終わる年齢。

 

仮に39歳で30年を超えるローンを組むと、完済は現役引退後になります。給与収入が途絶えた後も数年間にわたり、貯蓄を取り崩しながら住宅ローンの返済が続くことを認識しておかなければなりません。

60歳の定年で給与はピーク時のおよそ半分に

「自分は大企業にいるし、まだまだ給料は増えるでしょ」

 

と余裕を感じている39歳のサラリーマン。最近30年ローンで注文住宅を購入し、毎月の返済額は14万円ほど。元利均等の毎月返済を続けると完済時期は70歳手前となるため少々の不安が残りますが、現時点で係長に就任しており、今後も順調に昇格・昇給していけば住宅ローンの返済は「なんとかなるだろう」と考えています。

 

厚生労働省の調査で「大企業(従業員1,000人以上)勤務のサラリーマン」の給与事情をみてみると、非役職者(平均年齢41.4歳)の平均給与は月収で33.4万円、年収で523.0万円。その後45~46歳で係長に昇進すると月収42.7万円・年収769.8万円というのが平均です。次に48~49歳で課長になると月収61.0万円・年収1,038.4万円。年収は「大台」に乗ります。そして52~53歳で部長の座に就くと、平均給与は月収73.7万円・年収1,215.2万円となります。

 

順調に出世コースに乗れば、40歳から52~52歳の間で年収は倍増することになりますから、前出のサラリーマンが余裕を感じるのも無理はありません。

 

しかし、油断は禁物。サラリーマンの場合、「役職定年」に見舞われる可能性があるのです。

 

会社員の給与がピークに達するのは一般的に50代。その頃、部長などの役職に就いている人も多いでしょう。しかし、役職定年制を設けている会社もあり、60歳の定年まで「役付き」でいられるとは限りません。

 

仮に55歳で役職定年を迎えるとすると、その時点で平均3割の収入減となります。

 

それから数年、今度は60歳で「定年」を迎えることになります。希望すれば65歳まで働けるという会社がほとんどですから、とくに住宅ローンが残っている場合は、「もちろん働きます!」と考えるはずです。ただし、働き続けるとしても収入はまたしても平均3割減となります。

 

役職定年と定年を経て、給与が50代のピーク時から半分になってしまうことを考えると、55歳から住宅ローン完済までの15年強の資金計画について不安になってくる人も多いのではないでしょうか。