夫死亡で年金受給額減少…介護難民問題に巻き込まれる妻たち
介護施設に入居しているのは、平均寿命の関係から、女性のほうが圧倒的に多くなっています。平均寿命まで頑張った夫を看取った80代の妻が、自身は家族に負担をかけたくないからと施設に入居……そんなケースです。
実際に介護施設への入居を検討する場合、入居金などは貯蓄からまかなうとして、月々の利用料は年金でカバーできるのが理想です。
厚生労働省によると、厚生年金受給者の平均受給額は月14.5万円。65歳以上男性に限ると16.9万円、65歳以上女性に限ると10.9万円ほど。共働きの会社員世帯であれば、夫婦で月27万円、専業主婦の会社員世帯であれば国民年金は満額支給だとして月23万円程度が平均的な受給額となります。
夫婦で月23.5万円、もしくは月27.8万円。多いか少ないか、意見が分かれるような微妙な金額ですが、問題は、夫が亡くなり残された妻の年金額。夫を亡くした妻が手にするのは「自身の年金+遺族年金」。遺族年金は夫が受け取っていた厚生年金の3/4なので、単純計算、遺族年金は7.7万円、妻が受け取れる年金額は月14.3万円程度となります。
月14万円は額面。手取りとなると、13万円を下回ることになるでしょうか。そうすると、選べる施設は半数以下となりそうです。さらに選択肢が狭いのは自営業の夫婦。夫が亡くなっても遺族年金を受け取ることはできず、年金は満額で月6.6万円。月6万円代でも入居できる介護施設はありますが、数は少なく、入居待ちも多い……介護難民となることは覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
あくまでも年金受給額の平均値などで考えてきましたが、夫が亡くなった後、厳しい経済状況となることがみえている妻。介護難民になる可能性がぐっと高くなります。もちろん貯蓄でカバーするという方法もありますが、何が起きるか分からない老後。介護施設の月額使用料を貯蓄でカバーするのはリスクが伴います。
介護難民問題…介護資金確保以外の方法は?
深刻化する介護難民の問題。介護資金の確保以外に、回避する方法はないのでしょうか。
まずは都市部から地方へ拠点を移しておくことが考えられます。介護難民は高齢者人口の多い大都市のほうが深刻化していて、高齢者人口の少ない地方では、施設にも比較的余裕があるといわれています。いざ介護が必要、という段階で見知らぬ土地に引っ越すのは大変ですが、たとえば定年後、老後を見据えて地方へ移住しておくというのも、介護難民の問題に対してひとつの回答だといえるでしょう。
ただし、介護施設では人手不足が深刻化。これは全国的な傾向で、地方も人手不足は深刻な問題。地方へ引越すならどこでも安心というわけではないので、地域の情報をしっかりと分析することが重要です。
そして何よりも健康でいることが、介護難民を回避する有力な方法になります。現在、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる間」である健康寿命は74.1歳。男性の場合は7年、女性の場合は12年近くも健康不安を抱えながら生きることになります。平均寿命との差が短くなれば、その分、自身は介護とも無縁でいられるということになります。