サラリーマンが年収を上げるには、副業や兼業に勤しむことのほか、本業の職場で実績を挙げて役職に就く=出世するという方法があります。しかし、日本では「管理職になりたい」と考えている人は2割程度だとする調査結果があります。しかし、「責任が増えるから」「仕事量が増えるから」という理由だけで出世を拒み、「平社員」で居続けることにリスクはないのでしょうか。統計から考えます。
「仕事が増えるのはしんどい」…“出世”には見向きもせず、生涯〈平社員〉でいることを決めたお気楽サラリーマンの末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

役職に就くことは「年収アップ」の切り札だが…

23年夏のボーナス平均支給額は過去最高を記録したとの報道は話題になりました。同時に生活必需品の値上がりも相次いでいることから賃上げの実感は薄いという感想も多いでしょうが、サラリーマンとして勤めている以上、ボーナスを楽しみにしている人は多いはずです。

 

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大企業(従業員1,000人以上)に勤務するサラリーマン(平均年齢42.3歳)の平均給与は、月40.5万円、賞与も含めた年収で705.4万円。計算してみると、月収の約4倍の賞与を手にしていることがわかります。大企業に勤務する新規学卒者(大学)の給与は、男性で月23.4万円。年齢を重ねるごとに給与はあがり、50代前半で月収57.2万円・年収988.1 万円という水準までアップしていきます。

 

さて、従業員のボーナス支給額はどのようにして決まるのでしょうか。

 

まず、支給の条件として通常は査定期間があり、同期間のおける評価に応じてボーナスが決定します。民間企業の場合、入社初年度は査定期間が足りなかったり、会社に対する貢献度が低かったりという理由で、規定通りのボーナスを受け取れることは稀です。入社してすぐは「試用期間」がありますので、初年度のボーナスは受け取れたとしても、「ほんのわずか」だと思っておいたほうがよさそうです。

 

企業が順調な業績を挙げていることが前提にはなるものの、個人の査定によってその支給額が変動するボーナス。実績を挙げて出世して役職に就き、そしてさらに会社に貢献していくことで受け取れる額が増えますから、会社員にとっては、年収アップを実現する有力な切り札になるでしょう。

 

しかし、「責任が増える」「マネジメントに専念するために、現場の仕事から離れなくてはならない」「残業代をもらえなくなる」などの理由で、役職に就くことを避けるような考えを持つ人も少なくないようです。2019年に行われた調査で、非管理職に「いま勤めている会社で管理職になりたいか」と聞いたところ、「なりたい」という回答はわずか21.4%。調査対象となった14ヵ国のなかでも、日本人はひときわ出世欲が低いという結果になりました(株式会社パーソル総合研究所『APACの就業実態・成長意識調査』)。

 

「平社員」のままでいいとする理由はさまざまでしょうが、上司の激烈な仕事ぶりをみて「責任や仕事量と給与が釣り合っていない」と考える人が多いのかもしれません。

 

しかし、役職者になれる実力を持ちながら一生平社員でいることに、本当にリスクはないのでしょうか。

 

前出の調査によると、役職なしの正社員の月収のピークは50代後半で45.7万円。年齢とともに上がっていくものの、年収は800万円に届かずに会社員人生は終了します。

 

【大卒サラリーマン「役職なし」の給与の推移】

20~24歳:24.1万円/369.0 万円

25~29歳:28.4万円/514.6 万円

30~34歳:33.3万円/601.0 万円

35~39歳:37.8万円/682.1 万円

40~44歳:39.8万円/703.8 万円

45~49歳:42.3万円/735.7 万円

50~54歳:45.5万円/794.3 万円

55~59歳:45.7万円/783.8 万円

 

出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』
左:月給/右:ボーナス等も併せた年収

 

一方、役職者の月収は係長昇進時に43.5万円に、課長昇進時に60.7万円に、部長昇進時に74.8万円であり、部長ならボーナスも含めた年収は優に1,200万円を超えるというのが平均的な姿です。

 

こうして、平均的な年齢で係長、課長、部長へと昇進した場合と、平社員のまま定年を迎えたサラリーマンでは、生涯年収にして6,000万円ほどの差が付くことになります。「責任を負いたくない」という理由だけで平社員に留まろうとすることの代償はあまりに大きいといえるのではないでしょうか。