適切な麻酔の選択や気管挿管、循環動態の管理など、手術において欠かせない存在である「麻酔科医」。他の科に比べ“高給取り”といわれる麻酔科医ですが、いま深刻な人手不足に悩まされていると、東京西徳洲会病院小児医療センターの秋谷進医師はいいます。いったいなぜなのでしょうか。麻酔科医の仕事内容と給与事情、人手不足の原因についてみていきます。
“平均年収1,300万円超え”だが…圧倒的な人手不足「麻酔科医」の実態【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

1年目から1,000万円!“高給取り”麻酔科医の懐事情

冒頭でも述べましたが、このように手術において“監督”の役割を果たす麻酔科医は、そのスキルと経験が評価され、他の科よりも「高給取り」になる傾向にあります。

 

一般的に、初年度の麻酔科医の年収は約1,000万円ほどです。経験を積むにつれさらに上昇し、10年以上のキャリアを持つ麻酔科医の年収は、平均して約1,500万円~2,000万円となります。

 

また、大学病院の麻酔科医は、約1,200万円~1,500万円となっています。

 

一方、開業医やフリーランスとして働く麻酔科医の年収は、その診療所の規模や地域、患者数などによって異なるものの、一般的には2,000万円以上となることが多いです。病院によっては年収3,000万円の医師もいます。

 

出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年)」をもとに筆者作成
[図表1]診療科別医師の年収 出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年)」をもとに筆者作成

 

平均年収は1,335万円と、他の診療科と比較すると4番目に高い数字になっており、医師のなかでもかなり高年収な部類であることがわかります。

 

また、スポットバイト(※)もその高いスキルから高給であるのが麻酔科の特徴です。

※スポットバイト:不定期に、自分の空いた時間にだけ働ける単発のバイトのこと。

 

麻酔科医がたくさんいる都市部については、日中時間帯で最低1回10万円程度、麻酔科医が不足している地域では、日中で1回12万円程度収入があります。夜間では15万円ほどとなるケースもあります。

 

このように、金銭面だけみると非常に魅力的な職業ですし、専門性が高くやりがいがありそうです。しかし、麻酔科はさまざまな科のなかでも「不足しやすい科」といわれ、慢性的な人手不足に陥っています。いったいなぜでしょうか。