残された遺族に対して支給される「遺族年金」ですが、サラリーマンの妻と自営業の妻では大きな差があります。なかには同じ遺族という立場でありながら、遺族年金の支給対象外というケースも。みていきましょう。
夫・急逝でまさかの「遺族年金額」…崩れ落ちてく〈50歳・妻〉の老後プラン「これから、どう生きていけと」 (写真はイメージです/PIXTA)

夫・急逝でも「遺族年金」の対象外になるケース

日本の公的年金は、老後の保障として給付される「老齢年金」、疾病や負傷によって所定の障害の状態になった人に対して支給される「障害年金」、被保険者が死亡したときに残された遺族に対して支給される「遺族年金」の3つがあります。

 

そのうち遺族年金は、国民年金の被保険者等がであった人が亡くなった場合の「遺族基礎年金」と、厚生年金等の被保険者が亡くなった場合の「遺族厚生年金」の2つがあり、自営業者等が亡くなると「遺族基礎年金」のみ、会社員や公務員等が亡くなると「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が支給されます。

 

ただし、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、それぞれ受給要件が異なり、注意が必要です。

 

たとえば、自営業の夫に嫁いできた妻。子どもには恵まれなかったが、「老後はゆっくりと世界を旅でもしながら、夫婦水入らずの時間を過ごしたい」など夢を語り合いながら、二人三脚で頑張ってきた、そんなある日、夫が急逝。このとき50歳の妻が手にする遺族年金は……ゼロ円の可能性が高いと言わざるを得ません。

 

遺族基礎年金の受給対象者を確認すると、死亡した人に生計を維持されていた「子のある配偶者」「18歳になった年度の3月31日までにある、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子」とあります。

 

*①「生計を同じくしていること(同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められる)」、②「収入要件を満たしていること(前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5千円未満であること)の2つの要件をいずれも満たしている場合

 

つまり「自営業」×「子どもがいない夫婦」の場合は、遺族年金の要件には当てはまらないことになるのです。一方で、大学卒業後に会社員として働き30歳でフリーランスになったなど、亡くなった夫に会社員経験があれば、遺族厚生年金の受給要件に当てはまる可能性があります。

 

たとえば大学卒業から30歳まで、会社員として平均的な給与を手にしていたとしたら、遺族が受給できる遺族厚生年金は年間52万円、月に4.3万円ほど受給できる可能性があります。これで生活をすることはできませんが、まったく支給されないよりはましです。