高卒と大卒の年収、入社時点ですでに50万円の差
「良い大学を出て、良い会社に入れば、将来安泰」
そんな時代はとうの昔に終わり、昨今では「学歴は関係ない」というような風潮も強まっていますが、「給与」の面にフォーカスすると、日本の社会ではいまだに学歴の差が明確であることがわかります。
厚生労働省『令和4年賃金構造統計調査』によると、高卒サラリーマン(正社員)の場合、初任給が18万1,200円、18~19歳頃の平均年収が256万3,600円ほど。大学新卒者の初任給は22万8,500円、22~24歳頃の平均年収は314万3,000円ほどとなっており、新入社員の時点ですでに、年収にして50万円ほどの差が生じていることがわかります。
全年齢のサラリーマンを学歴ごとに比べると、高卒サラリーマンの平均給与(所定内給与)は月収27.3万円、年収397万5,900円。一方、大学サラリーマンは月収36万2,800円、年収553万2,300円。年収で150万円ほどの差がついていることがわかります。また、留年や浪人などを考慮しなければ高卒サラリーマンのほうが4年間長く働くことになりますが、ともに60歳まで働いた場合、生涯年収は大卒サラリーマンのほうが3,000万~5,000万円ほど多くなるようです。
大学進学には大きなコストがかかりますが、あくまでも平均給与を見比べる限りは、「大学を出ていたほうが有利」というのが日本の現実といえそうです。
現役時代の給与差は老後の年金受給額にも響く
高卒か大卒かによって現役時代の給与に大きな格差が生じることは上にみた通りですが、この差は定年退職後、65歳から支給が始まる公的年金の支給額にも影響します。
現時点では、20~60歳の40年間に未納期間がなければ国民年金の老齢基礎年金を年間77万7,792円受け取れることになっています。会社員として勤めてきた人であればこの老齢基礎年金に加えて、老齢厚生年金を受け取れるわけですが、これを構成する「報酬比例部分」の計算に、現役時代の給与差が影響を及ぼすことになります。
「報酬比例部分」は、2003年3月以前は①「平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月以前の加入月数」、2003年4月以降は②「平均標準報酬額(標準報酬月額+標準賞与額)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」によって計算します。つまり、高い給与で長期間働けば、それだけ受け取れる年金額が増えるということです。
高卒と大卒、2人のサラリーマンがずっと同じ給与を受け取ってきたのであれば、4年間長く働いてきた高卒サラリーマンのほうが年金を多く受け取れるということになります。しかし、実際には上にみたとおり、大卒サラリーマンのほうが年収にして平均150万円ほど多くの給与を受け取っているなど、その差は歴然です。
60歳定年で現役を引退したとすると、高卒の場合、平均標準報酬月額は41万円となり、65歳から手にできる厚生年金は月9万2,000円ほど。国民年金は満額の77万7,792円を受け取れるとすると、1ヵ月当たり15万6,000円ほどの年金を受け取れる計算です。一方で大卒の場合、平均標準報酬月額は53万円となり、65歳から受け取れる厚生年金は1ヵ月あたり10万7,000円ほど。国民年金が満額なら1ヵ月あたりの年金受取額は17万1,000円ほどになります。
高卒サラリーマンは4年分も多く年金保険料を納めているにもかかわらず、大卒サラリーマンに比べて老後に受け取れる年金額が1ヵ月あたり1万5,000円、1年あたり18万円も少なくなってしまうのです。
中卒や高卒であっても、事業を成功させて大きな報酬を得ている人は珍しくありません。また最近では、大学卒業後、30歳代半ばまで続く奨学金の返済に苦しんでいる人が多いことがよく話題になっていることからも明らかなように、数百万円の借金を背負ってまで大学に行くことが必ずしも正解とは言い切れないでしょう。
しかし、いまだに良い待遇の仕事を得る上では「大卒以上」という条件が課されることも多く、また、あくまでも平均値をみる限りは、学歴が高いほど収入が多いというのが事実です。ビジネスの才覚を持って生まれた人や、親族から莫大な財産を受け継いだ人など、特殊な条件下にない限りは、「大学は出ておいたほうがいい」というのが事実なのかもしれません。