メリットが大きい年金の繰り下げ受給…でも「未婚男性」はやめておいたほうがいい理由
実際に繰り上げ受給、繰り下げ受給したとすると、どれほどの金額になるのでしょうか。65歳で月17万円の年金を受け取ることのできる、元・サラリーマンを例に考えてみましょう。
まず繰り上げ受給。65歳から受け取れるはずだった17万円は、最大12万円弱まで減額され、それが生涯続くことになります。
60歳0ヵ月:11.9万円(30.0%の減額)
61歳0ヵ月:12.92万円(24.0%の減額)
62歳0ヵ月:13.94万円(18.0%の減額)
63歳0ヵ月:14.96万円(12.0%の減額)
64歳0ヵ月:15.98万円(6.0%の減額)
続いて繰り下げ受給。75歳までぐっと待つことができれば、17万円だった年金は、毎月30万円を越えるものになり、それが生涯続くことになります。
66歳0ヵ月:18.428万円(8.4%の増額)
67歳0ヵ月:19.856万円(16.8%の増額)
68歳0ヵ月:21.284万円(25.2%の増額)
69歳0ヵ月:22.712万円(33.6%の増額)
70歳0ヵ月:24.14万円(42.0%の増額)
71歳0ヵ月:25.568万円(50.4%の増額)
72歳0ヵ月:26.996万円(58.8%の増額)
73歳0ヵ月:28.424万円(67.2%の増額)
74歳0ヵ月:29.852万円(75.6%の増額)
75歳0ヵ月:31.28万円(84.0%の増額)
――年金が月30万円に……なんてお得!
そのように感激する人がいるのも納得の増額率。厚生労働省『簡易生命表』によると、2022年、日本人の平均寿命は女性が87.09歳、男性が81.05歳。平均寿命から考えても、繰り下げ受給のメリットはとても大きいように感じます。
一方で「未婚男性は繰り下げ受給はやめておけ」の声もよく聞かれます。なぜ、未婚男性だけ……その理由というのも「未婚男性の平均寿命は67.2歳」と驚くほど短命だからだというのです。
男性の死因を有配偶男性と未婚男性で比べると、有配偶男性が上回るのは悪性新生物のみ。未婚の場合、腎不全比率が最も高く、ほかにも高血圧性疾患や糖尿病が多くなっています。この2つは生活習慣によるところが大きいもの。未婚男性は外食がちになり、その分、糖質や脂質の摂取量が増えます。結果、短命に繋がっているといわれているのです。
もうひとつが自殺。男性全体の自殺率は人口10万人あたり25.7に対し、有配偶者は16.8、そして未婚は32.9、離別は101.0にもなります。どうして自ら命を絶ってしまうのか……その理由は計り知れませんが、ひとり身の男性は統計上、短命であることは確かです。
もちろん、未婚男性でもパートナーがいる男性以上に長生きする人はいます。しかし客観的な事実から「年金の繰り下げはやめておけ」といわれるようなリスクを未婚男性は抱えているといえるのです。