都心の新築マンション価格が高騰を続けています。マンション価格高騰の要因の1つになっているのが、都心に続々と誕生している「タワーマンション」ですが、“億超え”が当たり前の都心タワマンを買っているのは、富裕層や投資家だけではありません。本記事では、通勤の利便性や、きらびやかな暮らしへのあこがれから、都心に1億円のタワーマンションを購入した世帯年収1,500万円の30代パワーカップルの住宅ローン返済プランをシミュレーションしていきます。
1億円のタワマンを買った30代・パワーカップル…世帯年収1,500万円超の“勝ち組”から一転、「初めての節約生活」突入が不可避なワケ (写真はイメージです/PIXTA)

住宅ローンの返済割合は「少し負担を感じる」程度だが…

ともに30歳代、世帯年収で1,500万円を稼ぎ出すパワーカップルが、ペアローンを利用して1億円のタワーマンションを購入した場合のシミュレーションを行ってみます。物件価格の1割に相当する自己資金1,000万円を頭金に入れ、借入金額は9,000万円。返済方式は元利均等、金利1%、返済期間30年とした場合、総返済額は1億421万1,030円にのぼります。

 

利息分は1,421万1,030円、返済額は月々28万9,475円、年間で347万3,700円となります。2人の合計年収1,500万円に占める返済割合は、約23.2%。住宅ローンの適切な返済割合は年収の20%程度とされていますから、多少の負担感はあるものの、問題なく返していける水準といえそうです。

 

しかし、ローンを返済してさえいればタワーマンションに暮らせる訳ではなく、分譲マンションならではの「管理費」や「修繕積立金」などのランニングコストがかかってくることも忘れてはなりません。

 

管理費には、共用のエントランスや廊下などの清掃費、共用部の光熱費、エレベーターや自動ドアなどのメンテナンス費などが含まれます。タワーマンションでは、通常の分譲マンションにはないゲストルームやフィットネスジムなどの設備をウリにしているところが多く、その分、管理費も高く設定されています。国土交通省『平成30年度マンション総合調査』によると、タワーマンションの平均管理費は月1万5,726円。これは、通常の分譲マンションの1.4倍の水準です。

 

そして、将来的にマンションの修繕を行うための資金として毎月徴収されるのが修繕積立金です。

 

通常、マンションでは10~15年に1度のペースで大規模修繕が実施され、一般的なマンションの場合、修繕費は1戸あたり75万~100万円が相場とされています。しかしタワーマンションでは、その水準が1.5~2倍程度に跳ね上がります。前出の国土交通省の調査によると、タワーマンションの平均積立修繕金は月1万2,305円。多くのタワーマンションが「修繕積立金不足」に陥っているという調査結果もあり、今後、このコストは上がることはあっても、下がることは考えにくいというのが実情です。

 

ローンの返済に加えて管理費や修繕積立金の負担も発生しますから、夫婦のどちらか一方が減給するなどして世帯年収がガクンと落ち込めば、家計は徐々に破綻に向かいます。同じ職場で出会って結婚した2人だとしたら、業績悪化による収入減に直面したとき、目も当てられないような状況に陥ることは必至です。

 

消費意欲が旺盛できらびやかな暮らしを好む暮らしのパワーカップルが、タワーマンション購入を機に生活レベルを落とすとは考えにくいでしょう。ちょっとした移動にタクシーを使う、給料日がくると「頑張った自分へのご褒美に」と高級なブランド物を買う…。一度習慣化したそんなお金の使い方を改めるのは容易ではありません。

 

シミュレーションの結果、住宅ローン返済額が現在の2人の年収の2割程度に収まるから、と慢心するのは危険です。

 

余裕のある資金計画を立て、不測の事態に備えて日ごろから「電車があるうちはタクシー禁止」とするなど、細かな出費を減らす努力を重ねることが重要です。