実際の相談事例を基に、離婚とお金について解説する本連載。今回の相談者は、30代男性。夫婦ともに大手メーカーに勤務しており、世帯年収は2,000万円を超える「パワーカップル」ですが、お互いに仕事が忙しくなって2人はすれ違うようになり、新築の戸建てを購入してからわずか10ヵ月で離婚することが決まりました。子供がいなかったこともあり離婚協議はスムーズに進みましたが、ペアローン・共有名義で購入していた新築の自宅を夫名義に一本化しようとしたとき、壁にぶつかってしまいました。持ち家離婚カウンセラー・入江寿氏はどのようにアドバイスしたのでしょうか。
30代パワーカップルの離婚…ペアローン・共有名義の自宅に住み続けたい夫、「名義の一本化」に苦戦のワケ【持ち家離婚カウンセラー相談事例】 (※写真はイメージです/PIXTA)

持ち家離婚カウンセラーからのアドバイス

離婚時の自宅の名義変更について、単独名義のもの、たとえば夫名義の自宅を妻名義に変更する手続きに比べ、共有名義の自宅をいずれかに一本化するほうが、難易度はグンと上がります。また今回のケースでは、最初に住宅ローンを組んでからの期間が10ヵ月と非常に短期間だったこともあり、さらに難易度が上がってしまいました。

 

大企業勤務・高年収と夫の属性が良かったこともあり、結果として名義の一本化を実現できたのですが、もっとも良かったことは、夫があちこちで事前審査を行っていなかったことです。事前審査をしてしまうと個人情報にそのデータが残り、審査がどんどん厳しくなってしまうためです。

 

仮に一度でも事前審査の結果がNGになってしまうと、同じ金融機関ではしばらく審査ができない場合もあります。また、審査の結果は個人情報として記録され、保証会社が調べたときに、それが明るみになってしまうのです。

 

離婚の場合、年収が高く、社会的信用があっても銀行は取り合ってくれない場合がほとんどです。なぜなら、銀行は離婚による借り換えというニーズに対応する商品を持っていないことに加え、「虚偽離婚」の形で離婚して、新たに契約した住宅ローンを別用途に使われるリスクを恐れているためです。

 

そのため、個人で交渉を行う難易度は非常に高いというのが現実です。

 

「銀行がダメならば」と、司法書士や弁護士にアドバイスを仰いで自己流で名義変更を行ってしまうと、現在借り入れを行っている銀行との契約違反になってしまうこともあります。実はこれが、もっとも恐ろしいケースです。最悪の場合、契約違反ということで銀行から一括返済を求められることがあるのです。

 

まずは一度、既存の銀行との「金銭消費貸借契約書」に目を通しておきましょう。そのうえで、自己流で解決しようとはせず、離婚と住宅ローン問題の専門家にアドバイスを仰ぐことをおすすめします。