iPS細胞により介護人口が激減する
介護を劇的に変えるのは、機械だけではありません。医学の分野も、20年の間に飛躍的に進歩し、誰もが長生きできる時代が到来するかもしれません。
がんも、つい最近まで、死に至る不治の病(やまい)と言われていました。けれど、現在は5年生存率が6割近くで、半分以上の人が治っています。しかも、早期発見なら9割が治る病気になりました。
がんと闘いながら働いている人は、2020年時点で44.8万人もいます。厚生労働省も、働く人のために、夜間でもがん治療を受けられる方向で検討を始めています。
がんは、体内に入ってくる異物をチェックするT細胞の老化が引き起こすという説がありますが、これも、山中伸弥教授らが開発したiPS細胞を使って遅らせることができるとわかってきました。
すでに、iPS細胞で目の網膜をつくったり、不治の病と言われているパーキンソン病治療の研究が進められたり、脊髄損傷の治療に使って完全麻痺を治そうという試みが始まったりしています。
その進歩の速度を見ると、20年後には、再生医療が飛躍的に進化していて、病で傷んだ臓器まで、自分の細胞で新しくつくり出したものと取り換えられるようになっているかもしれません。
そうなると、元気で働けるお年寄りが増え、介護人口そのものが減っていく可能性もあります。
荻原 博子
経済ジャーナリスト