2025年には65歳以上の高齢者1人を2人の現役層が支える超高齢化社会に突入するといわれています。そんななか、気になるのは公的年金制度がこの先も維持されていくのか、年金を受け取れるのかということです。この点について、経済ジャーナリストの荻原博子氏は、年金そのものが破綻することはないと断言します。なぜでしょうか。荻原氏の著書「年金だけで十分暮らせます」(PHP研究所)より、一部抜粋して紹介します。
「年金破綻」は絶対にないが…国民の負担を増やすため政府が仕組んだ「5つのテクニック」【経済ジャーナリストが解説】

「年金」は破綻してしまわないのか

これから年金をもらおうという人、すでに年金をもらっている人が共通して持っている不安は、老後の命綱である「年金」そのものが「破綻」してしまわないか、ということでしょう。

 

現在、公的年金(年金制度)では、加入者のみなさんに支払いを約束しているお金(年金受給権が発生しているもの)が1,000兆円以上あります。けれど、将来のために積み立ててあるお金はわずか160兆円ほど。これから徴収していく保険料は少子化で減っていくし、年金をもらう人は高齢化で増えていく。

 

つまり、年金をもらう資格のある人がいっせいに、「今すぐ、もらえるはずになっている年金を全額欲しい!」と言ったら、到底払えないということになるからです。

 

しかし、「年金」がほんとうに「破綻」するのかというと、結論から言えば、年金は「破綻」しません。年金が破綻しないのは、3つの理由があるからです。

 

【年金が破綻しない3つの理由】

1. 年金は、今すぐ全額支払うものではない

2. 破綻しそうになれば、政府が助ける

3. 破綻しないための様々なテクニックがある

 

それぞれについて、順番に見ていきましょう。

1. 年金は、今すぐ全額支払うものではない

今、私たちが加入している公的年金は、国による過去の大盤振る舞いや杜撰な管理など様々な理由で、超高齢化社会に対応できるだけの十分な積立がない状況です。

 

しかも、みなさんご承知のように、その大切な虎の子の積立金も、その多くを株式運用や外貨建て投資信託などのリスクのあるものに投資しているので、経済状況の悪化や為替相場の変動によって、目減りしてしまう可能性があります。

 

ですから、「こんな状態ならさっさと年金を解散して、積立金を山分けすればいい。保険料は各自で将来のために積み立てていったほうがいい」と考える人もなかにはいるようです。

 

しかし、公的年金は、借金が山のようにある家庭のようなもの。すでに1,000兆円近い積み立て不足があるために、今解散したら積立金をもらえるどころか、1人1,000万円くらいずつ逆に支払わないと借金が減らず、公的年金は廃止できません。単純に4人家族なら、約4,000万円支払うということになり、とても現実的とはいえません。