「人生100年」といわれる時代、年金だけでは豊かな老後を過ごせないという認識が広まっており、定年後も、働きながら充実した人生を過ごすという生き方が、現実的な選択肢になってきています。そのためには、まず、何から始めればよいのでしょうか。FPの浦上登氏による著書『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)から、一部抜粋してご紹介します。
平均年金月額15万円だが「サラリーマン」は定年後も働くと減額のおそれ…満額受け取りたいなら「個人事業主として独立」がおすすめ【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

厚生年金受給額の「平均値」はどれくらいなのか

厚労省「令和3年(2021年)度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者平均(受給資格期間25年未満を除く、基礎または定額を含む)では、月額150,548円となっています。

 

これは、厚生年金保険への加入期間が25年以上の人の厚生年金額の平均値ということです。この数字には老齢基礎年金が含まれているので、老齢基礎年金の金額をひく必要があります。

 

同資料の国民年金受給者の平均年金月額・25年以上が56,479円なので、老齢基礎年金の金額をこれと同額とすると年金の「基本月額」は、150,548−56,479=94,069円となります。(ケースA)

 

これに対し、給与レベルが平均よりよく、40年間フルに勤めた人の年金の「基本月額」を15万円程度(ケースB)と想定すると、[図表2]に示すように、年金を全額もらうためには、給与収入は年収換算でケースAの場合で463万円、ケースBの場合で396万円以下に収める必要があります。

 

この場合、年金収入と給与収入の合計は年額576万円となります。

 

これに65歳以降もらえる基礎年金を加えた場合の総年収は、644万円から656万円となります。

 

これであれば、ある程度の生活レベルを保つことができるといえるでしょう。

 

ただし、会社に、上記給与レベルより高く、現役時代の年収に近い条件で雇用された場合には、年金が支給調整され、一部、場合によっては全額支給停止されることを覚悟してください。

 

注) 2023年4月からの在職老齢年金の支給停止調整額は48万円になった(2023年3月以前は47万円)  基礎年金ケースA:国民年金受給者の平均年金月額・25年以上が56,479円 厚労省「令和3年(2021年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による  基礎年金ケースB:2023年基礎年金満額(67歳以下の場合)
[図表2]在職老齢年金 支給停止にならない給与の上限試算 注) 2023年4月からの在職老齢年金の支給停止調整額は48万円になった(2023年3月以前は47万円)
基礎年金ケースA:国民年金受給者の平均年金月額・25年以上が56,479円 
厚労省「令和3年(2021年)度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」による
基礎年金ケースB:2023年基礎年金満額(67歳以下の場合)

 

しかしいつかは、会社人生も終わりを迎えます。その後も元気であり働きたいと思っているのなら、定年前に資格を取るなどして、継続雇用された時点から個人事業主として副業を始め、会社を退職する日に備えることもできます。

副業の内容を選ぶコツ

副業の内容は自分の好きな仕事、企業コンサルタントや、社会保険労務士のような士業の資格を生かした個人向けコンサルタントなど、なんでも構いません。

 

将来やりたい仕事を副業として始めておくことは、準備としては最高です。その場合、その仕事から得られる所得は事業所得になるので、いくら稼いでも年金収入は減りません。

 

また、帳簿付けさえきちんとしていれば、副業で赤字を出しても、給与所得と損益通算して、税金の還付を受けることができます。

 

年金を全額もらいながら、来るべき日のために、個人事業主としてのノウハウを手に入れ、収入も増やすことができるのです。

 

これが、再雇用・勤務延長と副業をセットにして、個人事業主としての本格的開業の準備をするというシナリオです。

 

 

浦上 登

サマーアロー・コンサルティング

代表・CFP認定者(日本FP協会)・証券外務員第1種(日本証券業協会)