親が加入してくれた保険があっても、その保障内容を把握できている人は少ないでしょう。そうした保険には思わぬ落とし穴が潜んでいると、FPdream代表の藤原洋子氏はいいます。一体どんな落とし穴でしょうか? 本記事では、Wさんの事例とともに保険の適切な考え方についてが解説します。
40歳商社マン、年収1,000万円でも破綻の危機…「親が加入してくれた保険」の落とし穴【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

40歳営業マン、健康には自信があったが…

Wさん(40歳)は、商社にお勤めの営業マン、年収は1,000万円です。子どものころからスポーツが好きで、小学生のときは水泳、中学生から大学生のあいだはバスケットボールに打ち込んでいました。バスケットボール部の部長として活躍した時期もあったそうです。

 

大学2年生のときに1年間アメリカの大学に留学しました。その経験からグローバルな環境で働きたいと考えるようになり、商社に就職を決めたそうです。27歳から35歳まで海外に駐在し現在は帰国されていますが、変わらずお忙しい毎日を過ごしているとおっしゃいます。

 

住まいは、転勤に備えて賃貸マンションです。会社では、毎年の健康診断が実施される時期になり、いつものように予約を取り検査を受けました。日常生活で、不調といえるような変化は感じていなかったので、今年も問題はないだろうと思っていました。

 

ところが、届いた健診結果には、「要精密検査」と記載がありました。便潜血反応が陽性というものでした。

 

「ちょっとしたことでこういうことはあるものだろう」とWさんは思いましたが、念のため病院を受診することにしたところ、医師からは大腸内視鏡検査を受けるように指示がありました。

 

「日帰りで受けられる検査です。もしポリープが発見されればその場で切除することもあります」などの説明を受けました。大腸内視鏡検査の日程は、1ヵ月後に決まりました。大腸内視鏡検査では、1cmを超える大きさのポリープが見つかり、切除しました。医師に「ポリープは詳しく検査をします」と言われたそうです。

 

「俺、大腸がんかもしれないってこと?」Wさんは、動揺しました。

 

確か、親が加入してくれている保険があったはず…

「もしも大腸がんだったら? 治療費はいくらくらい必要になるんだろう。治療期間は?」

 

Wさんは検査結果がわかるまでのあいだ、ネットで少し調べてみることにしました。しかし、さまざまな情報があり自分の場合はどのようにしたらいいのか、その時点ではよくわかりませんでした。

 

Wさんには、約1,000万円の貯蓄がありました。年収から考えると多くはありませんが、仮に治療が必要になったとしても、当面の治療費や生活費は問題ないでしょう。しかし、Wさんは「商社のいまの仕事は続けられなくなるかもしれない……」その不安が頭から離れませんでした。Wさんは、お酒が好きで、毎晩のように飲む習慣があり、飲酒量も多いほうでした。生命保険や医療保険、がん保険の加入について、「なにかしらに加入していれば十分だろう」と考えていたそうです。

 

大学生になったときに、母親から「保険に加入するよ」と言われ手続きをしたことがありました。母親の友人の紹介で、両親、弟、Wさんのご家族全員でがん保険に加入したのでした。Wさんは、その保険がどのような内容であるか保険会社に問い合わせてみました。保障内容は、

 

・入院給付金  5,000円(1日につき)

・診断給付金  25万円

・手術給付金  10万円

・退院後給付金 10万円

・死亡給付金  50万円


というものでした。