親が加入してくれた保険があっても、その保障内容を把握できている人は少ないでしょう。そうした保険には思わぬ落とし穴が潜んでいると、FPdream代表の藤原洋子氏はいいます。一体どんな落とし穴でしょうか? 本記事では、Wさんの事例とともに保険の適切な考え方についてが解説します。
40歳商社マン、年収1,000万円でも破綻の危機…「親が加入してくれた保険」の落とし穴【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の「がん罹患率」

 日本人で生涯のうちにがんと診断される方の割合は、男性65.5%、女性51.2%。2人に1人はがんと診断されるといわれています。罹患数は30代ごろから年齢が上がるにつれて増え、総数は1985年から増加を続けています。さらに、がんは1981年からずっと亡くなる原因の1位です。医療技術が進歩しても怖い病気のひとつといえるでしょう。

 

検査の結果、がんと診断された場合には、治療法の選択、治療、経過観察、という流れになります。がんの治療は、現在の最良の治療である標準治療(手術療法、薬物療法、放射線療法)に基づき、複数の治療法も選択肢として担当医と相談しながら選択します。治療後は、しばらくのあいだ通院が必要になります。

 

がんに備える保険について確認

がん保険に加入している場合は、給付金がどのようなときに受け取れるのか確認しておくべきです。更新タイプか終身タイプか、診断給付金は受け取れるか、入院や通院をした場合に給付金は受け取れるか、がん治療の給付金は受け取れるか、先進医療や自由診療を選択した場合に給付金は受け取れるか、などがチェックポイントです。

 

未成年のときに子供特約や家族契約として加入しているケースもありますが、その場合は、子が一定年齢に達すると契約の効力はなくなります。加入の際にどのような契約形態であったかも確認しておきましょう。

 

次に、Wさんの保険の内容について考えていきます。入院した場合の1日5,000円の給付は、もちろん足しにはなりますが、果たしていまのWさんにとって本当に意味のあるものなのでしょうか。年収1,000万円、貯蓄額1,000万円のWさんにとって診断給付25万円は、がんに罹患した際に働けなくなったり、働く時間をセーブすることになったりした場合の保障として足りているのでしょうか。

 

会社員がいままでどおり働けなくなると、傷病手当金を受け取ることができます。傷病手当金は休業1日につき、 基準額の2/3相当額を1年6ヵ月の範囲で支給されますが、普段の手取りより少なくなります。普段より少ない手取りに加え、治療費が上乗せされると、収支バランスが崩れる可能性があります。がんのような治療が長期化する恐れのある病気では、支給期間1年6ヵ月を越えることもありえ、その後は貯蓄を目減りさせていくことになり、生活破綻の危機も考えられます。

 

まだ自身が働いていないときに親が入ってくれた保険は、現在の経済状況と合っていない可能性が高いです。一度Wさんのように健康診断で指摘を受けると、たとえがんと診断されていなかったとしても、新しい保障を付け加えるための審査で引っかかる可能性は十分にあり得ます。健康という自負があると保険について考える機会は訪れづらいですが、もしもの場合に備え、そのときどきのライフプランに合わせた保険へ定期的に見直すことが重要です。

その後の生活はどうなる?ライフプランを作成しよう

がんと診断されれば、診断から休職、復職後の働き方について、生活費や治療費の問題、さまざまなことに配慮が必要であることが想像されます。がん検診には、デメリットもありますが、早期発見、早期治療が可能になるという大きなメリットがあります。

※死に至らないがんの発見により治療をしなくてはいけなくなったり、検査による偶発症が発生したりすることもある

 

国では、胃がん検診、子宮頸がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診の5つの検診が推奨されています。健康診断やがん検診で異常を指摘された時には、早めに医療機関を受診するように心がけましょう。

 

Wさんが大腸内視鏡検査で切除したポリープは、幸いがんではありませんした。しかし、今回のことをきっかけに、これからの生活設計について真剣に考えないといけないと思われたそうです。

 

お話を伺っていくうちに、実はご結婚をお考えであることもわかりました。皆さんも、数年後にはこのように暮らしたい、という夢や目標があるのではないでしょうか。生涯の計画であるライフプランを作成し、夢や目標を実現するにはどうすればよいか、しっかり検討していただきたいと思います。

 

 

藤原 洋子

FP dream

代表FP