終の棲家は「老人ホーム一択」ではない
老人ホームは常に専門のスタッフが常駐しており安心ですが、費用がかかることに注意が必要です。
介護保険制度が利用できる場合は、介護サービス利用料が1~3割負担で済みますが、自立している方は「自立者生活支援費用」などの利用料がかかるほか、介護保険制度は適用されず全額負担となり、思った以上に月々の費用が高額となることがあります。
70歳のB夫妻はまだまだお元気で、要介護認定も受けていない状態です。
したがって、介護サービスを必要としないあいだは、老人ホームではなく「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」がおすすめです。安否確認や生活相談のサービスがあるため安心して過ごせるほか、高級老人ホームに比べて月々の費用も手頃です。
また、介護が必要になった場合も外部の介護サービス事業者と契約し、サ高住に住み続けることが可能です。介護の頻度が増えてきたら介護付有料老人ホームへ住み替えるという選択肢もあります。
自宅を売却していなければ自宅へ戻るという選択肢もありましたが、すでに売却済みのため戻ることができません。
老人ホーム探しで失敗しないための「4つ」の予防策
B夫妻のような事態に陥らないためには、どのような対策が考えられるでしょうか?
1.自宅の売却は、施設の生活に慣れてからにする(目安:2~3ヵ月)
90日以内の退去であればクーリングオフできるため、初期償却が発生しません。ただし、老人ホームごとに初期償却の金額や償却期間が異なるため、契約書類をよく確認しておきましょう。
2.施設の見学は複数行い、入居前には体験入居を利用する
見学だけではわからないことがあるため、必ず本格的に入居する前に体験入居することをおすすめします。また、設備については本当にご自身に必要なものかどうか、よく考えましょう。設備が充実していることはいいことですが、月々の利用料に反映されていることをお忘れなく。
3.これまでの友人とも交流したい場合は、自宅の近くで探す
老人ホームを選ぶ際、家族が住む地域の近くにある施設か、もともとの自宅近くにある施設か悩ましいところです。慌てて決めずに、じっくり検討しましょう。
どうしても決めきれない場合は、次で説明する「月払い方式」で家賃を払い、一定期間だけ利用してみるという選択肢もあります。
4.家賃の支払い方法について、それぞれの特徴を確認しておく
人生100年時代のいま、老後想定以上に費用がかかる場合があります。余裕があれば、老人ホームは「前払い方式」を選択し、長生きしても家賃がかからない安心を確保しましょう。
Bさんのように途中で退去する可能性がある場合は、初期償却のない「月払い方式」が安心です。ただし、月々の家賃負担額は「前払い方式」よりも「月払い方式」のほうが割高になるため、注意が必要です。どちらが自分に合っているかわからないときには、この2つを併用する「併用方式」を選択することもできます。
B夫妻は結局、もともとの自宅近くで施設を探し直し、昔なじみの友人やお客さんが集う場所を見つけました。ようやく充実した日々を過ごせるようになったようです。
事前の情報収集を怠らずに無理のない資金計画を立て、自分に合った終の棲家を選びましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役