超低金利の環境下にある日本では、投資による資産形成の重要性が強く指摘されるようになっています。ただ、一口に「投資」といってもアプローチは人によってさまざま。本稿では、テクニカル分析の解説サイト『テクニカルブック』を運営する株式会社アドバンの代表取締役・田中勇輝氏が、「Z世代」と「バブル世代」の投資家2人を例に挙げ、世代による投資アプローチの違いを解説します。
FX・暗号資産にも挑戦する26歳「投資女子」とリスクを取らない57歳「サラリーマン投資家」…成果への満足度に表れた顕著な差 (※写真はイメージです/PIXTA)

「Z世代」と「バブル世代」の投資事情

投資家が100人いれば、投資アプローチも100通り。いつ、どんな金融商品に、どの程度の金額を投じ、どの程度のリスクを許容するのかは人によって異なります。

 

とくに世代ごとの投資行動の違いには、着目すべき点が多くあります。

 

まずは、IT企業に勤める26歳の女性、西原さん(仮名)と、同じくIT企業勤務の57歳の男性、東さん(仮名)の投資事情から、Z世代とバブル世代の投資アプローチの違いをみていきます。

 

スマホを使いこなして情報収集する26歳・投資女子

IT企業に勤める26歳の西原さんは、社会人になってからすぐに投資を始めました。最初は分配金目的でつみたてNISAから始めましたが、現在では外国株式やFX、暗号資産にも挑戦しています。フィンテック領域にも興味があり、日々勉強の毎日です。

 

西原さんは投資判断において経済ニュースや企業業績などをとくに重要視していて、情報収集に余念がありません。

 

スマートフォンには投資関連のアプリがずらりと並んでおり、昼休みにはそれを使って相場をチェックするのが日課。また、SNSも「ほかのトレーダーの相場の動きに対する生の反応が見えて勉強になる」と、積極的に活用しています。

 

現在では、平日の夜や休日を使って、FXや暗号資産の短期トレードに力を入れています。

 

短期トレードではテクニカル分析の重要性が増すため、パソコンの前でチャートを分析する時間が増えてきたそうです。「短期間でのFIRE達成」といった話にあこがれていて、もっと知識を磨いて短期トレードで大きな利益を得たいと考えています。

 

直近1年間の投資成果は「金額的にはまだまだ」とのことですが、しっかりとプラスの利益を確保できており満足しているようです。現在の投資資金は100万円ですが、FIREをめざして、多少のリスクは気にせずに大きく増やしていきたいと考えています。

 

経験に基づく“勘”で投資判断する57歳・サラリーマン投資家

同じくIT企業に勤めている東さんは、ITバブルが騒がれた2000年頃に興味を持って株式を購入したのが最初で、投資経験は約20年です。投資対象はずっと国内株式の現物取引。リスクは抑えたいという思いもあり、レバレッジのかかる信用取引には手を出さないのがモットーです。

 

現在は習慣的に読んでいる新聞や経済誌で気になった銘柄を直感的に購入して、上がるまで待って売るというスタイル。うまくいけば2~3ヵ月ほどで売却して利益を手にしています。ただ、うまくいかなかった場合はなかなか売却に踏み切れないことも多く、損切りするまでに数年間塩漬けにすることもよくあったとのこと。

 

東さんの大きな成功体験はアベノミクスの頃。株式市場全体が大きな上昇相場となって、買えば儲かるという感覚で、このときに投資資金も大きく増えて1,000万円に乗せることができました。ただ、そのまま一本調子で資金を増やしていくことはできず、その後は伸び悩んでいるそうです。直近1年間の投資成果は大きな失敗こそしていませんが、利益もそれほど出ていません。

 

ちなみに投資資金とは別に定期預金を中心とした貯蓄があり、貯蓄のお金を投資に回すことは絶対にしないようにしているそうです。リスクに対して敏感で、投資もできるだけリスクは取らないという考え方です。