富裕層のあいだでポピュラーな相続税対策のひとつだった「タワマン節税」に関し、一部報道によれば、国税庁がマンションの相続税評価額の算定方法の新ルールを設ける見通しであることが判明しました。施行されればタワマン節税の旨味は大幅に失われます。そこで本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏が、タワマン節税の内容と問題点、導入されるとみられる新たな算定方法について、わかりやすく解説します。
算定法見直しで「タワマン節税」終焉へ!きっかけとなった「最高裁判決」相続税0円→3億円課税で相続人撃沈【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

度が過ぎた「タワマン節税」、国税庁から目を付けられ…

しかしながら、この「タワマン節税」も度を過ぎると国税庁から目を付けられます。相続した不動産の評価方法で、令和4年4月の最高裁にて「タワマン節税」を行った納税者の敗訴が確定した例をご紹介しましょう。

 

被相続人:94歳男性

相続人:配偶者、子供4人(うち孫との養子縁組1人)

 

<不動産1>

購入額:8億3,700万円(相続の3年5ヵ月前に購入)

相続税(路線価等)評価:約2億円

不動産鑑定評価(時価):約7億5,000万円

※未売却

 

<不動産2>

購入額:5億5,000万円(相続の2年6ヵ月前に購入)

相続税(路線価等)評価:約1億3,000万円

不動産鑑定評価(時価):約5億2,000万円

※相続から約9ヵ月後に5億1,500万円で売却

 

なお、路線価で評価しても2件で3億円以上の不動産となりますが、被相続人は不動産購入時に銀行からの借り入れを行っており、この借り入れとの相殺により相続税は0円となっていました。

 

路線価等評価と不動産鑑定評価には大きな開きもあり、不動産鑑定評価をもとに追徴課税に踏み切った国税側と、「財産評価基本通達」(路線価や固定資産税評価額をもとにした評価)による通常での評価を主張する納税者との争いとなりました。

 

裁判所は、

 

・亡くなる3年ほど前に立て続けに高額の物件を購入していること。

・高齢者による不自然な不動産購入や借り入れ。

・物件購入の借り入れの際の銀行の稟議書に「相続対策」との記載があったこと。

・相続人が相続から短期間で物件(1件)を売却していること。

 

以上のことなどから、「いきすぎた節税行為」と判断し、国税側の主張を認め、相続税約2億数千万円と過少申告課税が加わった実に3億円超の処分が確定しました。0円からいきなり3億円超では、相続人も撃沈です。

 

しかし、このような判決が出ると、相続税の評価は「路線価」にすればいいのか「時価」にすればいいのかわからなくなりますよね。そこで、今回のような見直しとなったのです