生活保護費を下回る「平均年金額」
日本の高齢化率は増加の一途を辿っています。2022年10月時点で29.0%。2025年には30%超え、2040年には35%、2060年には38%に達するといわれています。また高齢者の実数は、2040~2045年ごろに4,000万人直前まで増加する予測。高齢者世帯の生活保護率が一定であれば、それだけ生活保護を受ける高齢者も増加の一途を辿ることになります。
老後の生活の基盤になるのは公的年金ですが、国民年金は満額で月6.6万円。また厚生労働省によると、現役時代の給与で給付額が変わる厚生年金は国民年金との合算で平均月14万円。ただこれは税引き前。実際は85~90%ほどといわれていますから、12万~12.5万円ほどが手元に残るイメージです。一方、総務省の調査によると、高齢者1人当たりの生活費は14万円ほど。月に2万円ほどの赤字となり、その分は貯蓄で補填しなければなりません。
ちなみに、東京23区の場合、70代高齢者の生活扶助基準額は7万4,220円、住宅扶助基準額は5万3,700円。持ち家であれば月7万円強、賃貸であれば月12.7万円がなければ、憲法でうたう「健康で文化的な最低限度の生活」ができないというわけです。
平均的な元会社員の高齢者がいたとしたら、賃貸だと生活保護費とトントンか、下回る程度の年金しか受け取れないということ。また国民年金だけという場合は、持ち家だろうと賃貸だろうと、最低限度以下の生活もできないということになります。
また年を重ねるごとに体の自由はきかなくなり、次第に支援や介護を必要となるケースも増えていきます。多くが同居していたり近くに住んでいたりする家族が、まずはサポートしてくれますが、そのような家族がいない場合、なんとか自宅で頑張ろうとするでしょう。しかし、そこにもいずれ限界が。そうなると「老人ホーム」への入居を検討したいところですが、生活保護を受けている場合、「もうだめだ、どう生きていけばいいのか」と途方に暮れてしまう人も。
実際は、生活保護の受給者でも入居できる老人ホームは全国に点在しています。2013年と、少々古い調査ではありますが、生活保護受給者用の料金体系を設定している老人ホームは、「介護付き有料老人ホーム」で9.5%、「住宅型有料老人ホーム」で28.4%、「サービス付き高齢者向け住宅」で23.9%。多数派ではないにしろ、生活保護を受けていても、ちゃんと介護を受けながら生活することができます。
現役世代からすると「毎月、高い保険料を払っているのだから」と年金だけである程度、老後の生活が保証されると考えるでしょう。しかし、「年金だけで暮らしていける」という水準は、生活保護費で賄える程度の水準=最低生活水準であり、半数以上はそれ以下だというのが現実。このような事実を受け入れ、できるだけ早く、老後を見据えて資産形成を始めるのが正解です。