長寿化や高齢化の進展で、避けては通れない介護問題。介護する側もされる側もさまざまな問題を抱えていますが、最近は介護サービスも充実し、双方に大きく負担を軽減させることができるようになりました。一方で、手を貸してもらいたくても貸してもらえない状況にある人もいるようで……。本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏がAさんの事例とともに、少額から利用できる介護サービスを一覧で紹介します。
66歳・長男の嫁「いくらなんでも辛すぎる」5年におよぶ90歳・義父の介護地獄…負担を減らす“少額からの介護サービス・一覧”【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

女性1人での介護は限界

介護には体力が必要です。入浴やトイレの介助、ベッドから車いすへの移動、外出の付き添いなど、どれもかなりの体力を使います。女性が男性の介護をするのはかなり大変です。特に老老介護の場合は、高齢者が介護を行うのですから身体的な負担はかなり大きくなります。

 

また、介護する人は精神的な負担もかなりなものです。嫁や娘といった家庭内で介護を任せておくと、一見安心できるように思えるようですが、身内でのストレスも当然あります。

 

高齢者の世代ですと「よその人間の世話にはなりたくない」「介護する人が家にいると恥ずかしい」という考えを持つ人もいますので、女性1人で無理して介護を頑張っている家庭も少なくありません。当然ですが、介護者に過度なストレスや疲労が蓄積されていけば、介護に支障をきたすようになってきますし、介護者が高齢者の場合は介護者自身も病に倒れてしまう危険性もあります。

 

そのため、介護は1人に任せるのではなく、協力したり交代したりできる人の存在が必要であり、そのための介護サービスといえるでしょう。

利用しやすい介護サービスの種類と費用【一覧】

介護サービスを受けることを介護される本人自身が嫌がる場合があります。そんな場合には、週に1回からでも利用を始めて慣れてもらうようにしましょう。

 

各サービスの自己負担額は費用の1割ですが、現役並みに所得がある利用者の自己負担は所得に応じて2割または3割負担となります。また、要介護度、利用時間、利用するサービスの種類や所在地等によって金額が異なりますので、事前の確認が必要です。なお、給付の対象になっていない食事やおやつ、娯楽時間での工作などの材料費などは全額自己負担となりますのでこの点もご注意ください。

 

1.訪問介護

1日に数回、自宅にホームヘルパーが訪問し、食事の介助や入浴・清拭、排せつ介助やおむつ交換、床ずれ防止のための姿勢移動などをしてくれます。家事が困難な家庭には、掃除や洗濯といった生活援助のサービスも受けることもできます。サービスの内容や時間などによって金額は変わってきますが、数百円程度なので大きな金額にはなりませんし、スケジュールを作成するときに詳しく説明してもらえますので、1ヵ月にどれだけかかるかを事前に知ることができます。

 

2.デイサービス

デイサービス(通所介護)は、週に数回、自宅から施設まで日帰りで通う(送迎あり)ことにより、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練等といったサービスを受けることができます。また、デイサービスを利用することで自宅の外に出ることになりますから、閉じこもりや孤立を防ぎ、いろいろな人と触れ合うことができるため、良い刺激にもなります。費用は昼食を含めても1回1,000~2,000円程度で済みますが、利用する施設によって金額も変わりますので、事前に確認しておきましょう。

 

3.ショートステイ

ショートステイとは、家庭の行事(冠婚葬祭など)や介護者の体調不良などで一時的に介護ができない場合などに利用できるサービスです。食事などは全額負担になりますが、介護保険が利用でき、1泊あたり5,000~7,000円程度です。たまに利用することで、介護者の息抜きにもなりますし、利用する本人にとっては将来老人ホームへの長期入所の入居体験となります。


筆者も自宅介護をしていたときは、訪問介護とデイサービスを組み合わせたり、出張のときはショートステイを利用したり、と頻繁にお世話になっていました。自分の生活とのバランスを取りながらうまくサービスを利用することが重要です。

老老介護から認認介護のリスクも

高齢化が進んでいくとともに、認知症患者数も増加しています。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度)の推計では、65歳以上の認知症患者数は、2025年には約675万人となり5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。

 

老老介護は、認知症の人の介護をしている介護者自身も認知症になってしまうという、いわゆる「認認介護」へと進んでしまうリスクも含んでいます。老老介護で毎日介護をしている人は、目を離すことができないことから自由に外出することも難しく、家に閉じこもりがちになりがちです。それにより、外部との関わりが少なくなってしまうと、悩みやストレスを1人で抱えがちになり、助けも求められなくなってしまいます。

 

強いストレスが認知症発症の要因のひとつとも言われていることから、介護者自身が認知症を発症し、認認介護に移行しているケースもあるようです。そうなるともう共倒れ状態です。こういった状態にならないためにも、行政の相談窓口の利用や介護サービスの利用は重要ですし、介護経験のある人の話なども聞いて必要なときにアドバイスをもらえるようにしておきましょう。

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表