老老介護で心身ともに限界を迎えた66歳・専業主婦のAさん
Aさんは66歳の専業主婦で、同い年の夫と90歳になる義父と3人で同居しています。夫は一人息子のため、Aさんはいわゆる「長男の嫁」です。息子(35歳)は結婚していますが妻とは別居しており、娘(30歳)は独身で社会人として働き、ひとり暮らしをしています。
Aさんは結婚するまで会社員として働いていました。結婚後も働き続けたかったのですが、「嫁は家に入るべき」という嫁ぎ先の意向で、結婚とともに退職して以降、専業主婦を続けています。専業主婦といっても、義母は礼儀作法から料理の味付けまでとても厳しい人で、5年前に脳溢血で急逝するまでAさんは肩身の狭い暮らしをしていました。
その後、夫も定年退職し、「これで少しは楽に生きられるかな」と思っていた矢先に義父が介護状態となってしまいました。
Aさんの嫁ぎ先は裕福な家庭でしたが、「施設などに入れて父親の弱った姿を人目に晒したくない」「病人の面倒を看るのは嫁の務めだろ」「家でできるのにわざわざ金を払って人に介護を頼むなんて」と夫に言われ、介護の負担はすべてAさんにかかるようになりました。夫も定年退職後は再就職もすることもなかったのですが、なにかと理由をつけては外出し、自分の親の面倒を看ようともしません。
Aさん自身も高齢者ですから、老老介護です。義父の介護にかかる時間は年々増えてきますし、当然のようにAさんの不満は蓄積され、心身ともに弱っていきます。
「いくらなんでも辛すぎます」
「夫からは結婚して以降『ありがとう』といった感謝の言葉を聞いたことがありません。一言でもねぎらいの言葉をかけてくれれば私も救われたかもしれないのに。たとえ義父の介護が終わっても、次は夫の介護をしないといけないのではないか、と思うとゾッとします」
Aさんは離婚も考えたことがあるそうで、
「お勤めの期間が短かったから年金も月に8万円くらいしかないんですよ。貯金もへそくり程度しかないので、離婚しても一人暮らしもできません。結婚後も働き続ければよかった、と本当に後悔しています。娘には私のような苦労はさせたくないので、理解のある旦那さんを選んで、もし1人になっても暮らしていけるようにしっかり働きなさい、と言っています」
「介護をしていると、介護にどれほど体力が必要かということが身に沁みます。私も年なので義父の介護は相当体に堪えています。夫の許しは出ないですが、介護サービスを利用してみたらどれだけお金がかかるか、ということは調べました。ただ、調べたことによって、もし夫と別れたとしてもその後に自分が介護になる可能性があると思うと、金銭的余裕のない私はやっぱり離婚できないと痛感したんです」
嫁だから、という理由で義理の親の面倒を1人で看る必要はありません。訪問介護などのサービスを利用したり、介護度によっては施設に入れたりすることも可能です。介護についての相談は、お住まいの市町村の「地域包括支援センター」に問い合わせてみましょう。保健師や社会福祉士、ケアマネージャーといったプロが相談にのってくれます。