働き盛りの人を襲う突然の不幸。「そんなことは絶対に起きない」とは誰もいえず、残される家族のためにも「万が一のこと」はきちんと考えておく必要があります。そこで遺族を支える公的年金である「遺族年金」について考えていきましょう。
子のない夫婦の悲劇…年収550万円・44歳の夫が急逝、専業主婦の妻「遺族年金額」に呆然「たったこれだけで、どうしろと!?」

平均的なサラリーマンが亡くなったら…遺族年金受取額、4パターン

では44歳の平均的なサラリーマンが亡くなった場合で、いろいろな家族のケースを考えてみましょう。ここでは妻はサラリーマンと同学年とします。

 

①専業主婦の妻と18歳未満の子どもが2人いる場合

子のある配偶者が受け取れる「遺族基礎年金」は、「795,000円+子の加算額」。加算額は、1人目および2人目の子で「各228,700円」、3人目以降は「各76,200円」となります。この場合、年間125万2,400円の遺族基礎年金が受け取れる計算です。

 

厚生遺族年金の年金額は遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。ただし【亡くなった人の要件】の①②③の場合、報酬比例部分の計算で、厚生年金の被保険者期間が25年未満の場合は300ヵ月とみなして計算します。つまりこの場合に適用するのは300ヵ月。そうすると年間67万円の4分の3となり、約50万円の遺族厚生年金が受け取れる計算です。

 

2つの年金を足すと、年間175万円、1ヵ月あたり14.5万円。これが残された遺族をサポートする費用の一部となるわけです。

 

②専業主婦の妻とすでに成人に達した子どもがいる場合

前述のとおり、遺族基礎年金が受け取れるのは、子が成人に達していない場合。よって、このケースでは遺族基礎年金をもらうことはできません。

 

一方、厚生遺族年金は年間50万円、月4万円強を手にできる計算です。

 

③月収60万円・年収860万円のキャリアウーマン妻と、18歳未満の子どもが2人いる場合

このケースでは、遺族基礎年金、遺族厚生年金、ともに受給対象者の要件に記されている「生計を維持されていた」という文言がポイントになります。

 

これは原則、「①生計を同じくしていること、たとえば同居している、別居していても仕送りしている、健康保険の扶養親族である等」「②前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5,000未満であること」という条件を満たしている必要があります。

 

つまりこのケースでは、収入要件を満たしておらず、遺族年金は1円ももらうことはできません。

 

④家族は専業主婦の妻のみ

昨今、増えている「子どものいない夫婦」。国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集(2020)』によると、家族構成について、「夫婦のみ」の世帯は増加傾向にあり、2040年には21.1%、5世帯に1世帯の割合になるといわれています。このなかには、「子どもが独立して夫婦のみになった」というケースも含まれますが、望むか、望まないか別として、現在「子のない夫婦」は7~8%ほどといわれています。

 

遺族基礎年金の受給対象者は「子のある配偶者」か「子」なので、「子のいない妻」は受け取ることはできません。つまりこのケースは、遺族厚生年金のみが対象となり、年間50万円、月4万円強を手にできる計算となります。

 

子のいない夫婦の場合、手にする遺族年金は遺族厚生年金のみ。このケースでは「たった、これだけでどうしろと……」と、思わずつぶやいてしまうほどのお金しか手にできません。ほかに莫大な遺産などがない限りは、パートナーを失ったのを機会に働かないと暮らしていけない、というのが既定路線だといえるでしょう。

 

――長年、専業主婦だったのに、いまさら働けなんて

 

そう不安を抱える人もいるでしょう。このような現状も踏まえて、「万が一」のことはしっかりと考えておきたいものです。