都内在住で、順風満帆なキャリアを歩んできたAさん(48歳)。しかし、ある年の健康診断をきっかけに「大腸がん」であることが発覚します。家族もおり、お金まわりに不安を覚えたAさんでしたが、新卒時にがん保険に入っていたことを思い出し一安心。しかし、保険会社から「衝撃のひと言」を言われてしまうのです……。FP Office株式会社の清水豊氏が、48歳のAさんの事例をもとに、がん保険の「ワナ」と対策についてみていきましょう。
年収1,200万円の48歳・エリート会社員、ステージIIIの大腸がんに…退院後、おもわず絶句した“保険会社からのひと言”【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

“がんになっても給付金が出ないがん保険”がある?

がん保険に入る際には、「もしがんになったとき十分な治療を受けたい」と思って入る方がほとんどだと思います。もしがんなどの重病になった際治療費が足りなければ、その治療を諦めざるをえない可能性があるからです。

 

しかし、現実には「がん保険に加入しているにもかかわらず十分な保障を受けることができなかった」というケースが存在します。どうしてそのようなことになるのでしょうか? 48歳のAさんの事例をもとに、詳しくみていきましょう。

ステージⅢの大腸がんが発覚…「がん保険に入っているから大丈夫」と安堵も

大手メーカーに勤務するAさん(48歳・男性)は、これまで1度も大病を患うことなく、順風満帆なキャリアを歩んできました。年収は1,200万円あり、都内に妻と娘2人の4人で暮らしています。

 

ところが、ある年に会社の健康診断を受けたところ、「便潜血反応」が出ました。精密検査をすると、ステージⅢの大腸がんであることが判明。医師からは、手術内容と術後6ヵ月の補助化学療法について説明がありました。

 

がんの宣告を受け、頭が真っ白になったAさんでしたが、すぐに頭をよぎったのは家のローンと2人の娘の教育費のことでした。特に長女は大学生になったばかりで、教育費が重くのしかかるタイミングでの闘病生活に入ることになるため、不安が押し寄せてきます。

 

しかし、Aさんには新入社員のときに加入した「がん保険」と「高額療養費制度(付加給付)」、「傷病手当制度」がありました。そのため、「まあ、金銭面ではなんとかなるだろう」と考え、告知を受けた翌日には上司に病状を伝え、スムーズに休職手続きを取りました。

 

2週間ほどの入院・手術を経て、抗がん剤による通院治療に専念。その結果、Aさんは半年ほどで職場復帰ができました。無事退院でき、Aさんはがん保険の診断給付金と入院給付金を受け取りましたが、「あれ?」とAさんは疑問に思いました。「給付金が少なすぎる……」

 

なんと、診断給付金は半額しかもらえず、通院給付金については、まったく受け取ることができなかったのです。

 

“Aさんのプランですと、給付金は出ませんね”

Aさんが入っていたがん保険は、「診断給付金は65歳未満の場合半額」というものでした。また、あとからわかったことですが、通院給付金については20日以上入院したあとの通院でなければ給付されないものだったため、給付されなかったようです。

 

また、Aさんの家計を苦しめたのは、保険の面だけではありませんでした。

 

Aさんは休職期間がまるまる賞与の対象外となったことにより、その年のボーナスは半分に。加えて、復帰後の半年間は「体調を優先に」という上司の助言により残業をほとんどすることができず、休職前に比べて収入が3割近く減ってしまいました。当然、Aさんの貯金もみるみる減っていきます。

 

さらに、それから2年後、肝臓へのがんの転移が見つかりました。これについては、手術ではなく抗がん剤で治療することになったものの、5日間の入院ののち通院する日々が続きました。また、Aさんはその当時未承認だった抗がん剤を使って治療をすることを選んだため、全額自費負担となりました。

 

Aさんは、保険会社に連絡してみました。再びがん保険の給付を受けようと思ったのです。しかし、保険会社によるあまりに冷酷な返答に、Aさんはおもわず絶句してしまいました。

 

「Aさんの入っているプランですと、診断給付金や通院給付金は受けられず、自由診療に対する保障もないものになります」

 

結果、Aさんの家計は火の車に。日々の生活費や娘たちの教育費、ローン返済などは、Aさんが老後のためにつくっていた貯金や個人年金などを取り崩すしかありません。

 

その後、Aさんは再びがん保険の給付を受けようと保険会社に連絡したところ、診断給付金や通院給付金は受けられず、自由診療に対する保障もまったくありませんでした。

 

その結果、Aさんは老後生活のために貯めていた貯金や個人年金などを取り崩し、日々の生活費や教育費、ローンの返済などに充てることとなってしまったのです。