老人ホームへ入居…「最後まで安心」は絶対ではない
介護が必要になったら……配偶者や子どもに介護・支援をお願いするのもひとつの選択肢ですが、施設に入居するというのも昨今の有力な選択肢になっています。
厚生労働省では特別養護老人ホームの1ヵ月の自己負担の目安として、要介護5の人が多床室を利用した場合は約10万4,200円、ユニット型個室を利用した場合は約14万1,430円としています。また別資料では、サービス付き高齢者向け住宅の平均利用料金総額は14万0,241円、有料老人ホームでは18万9,982円としています。
高齢者施設の平均入居年齢は80歳前後といわれていますが、80歳が手にする年金受取額は、厚生年金受給者で15.4万円。手取りは13万円ほどでしょうから、プラスαの貯蓄があれば十分検討できるといえます。なかには自宅を処分して、施設への入居を考えるケースもあるでしょう。住まいの維持は結構な労力が必要ですし、カラダの自由が段々と利かなくなってくる高齢者ならなおさらです。
「終の棲家として」。そう考えて、施設に入居した人たちは、一様にホッとしていることでしょう。
――これで最後まで安心
しかし、最近は、そのような人生最後の願いも叶えられない事態が起きています。
東京商工リサーチによると、2022年に倒産した介護事業者は143件。コロナ禍で利用者が減少したことによるもので、過去最多を記録しました。種類別にみていくと「通所・短期入居」が69件と最も多く、「訪問介護」が50件と続きます。「有料老人ホーム」も12件が破綻しています。
破綻の原因は利用者減だけでなく、昨今の物価高の影響も。介護業界には、介護報酬の基本単位は一律で決まっているので、運営コストが増加してもサービス費用への転換が難しい、という実情があります。
終の棲家だと思って安心して入居したのにも関わらず、施設は破綻。経営を引き継ぐ会社があればいいのですが、なければ退所しなければなりません。次の施設が見つかればいいのですが、昨今、介護業界では人材不足が深刻化。定員に余裕があっても、これ以上は入居させられない、入居はお断り……そんな施設が増えており、「介護難民」となる人が増えるという懸念が広がっています。
介護施設の破綻においては、入居者は閉業が決まってからその事実を知ることになります。例えそうなったとしても、入居者が望む生活を継続できるような支援が必要です。