世帯年収1,500万円のタワマン暮らし「勝ち組パワーカップル」…老後資産形成をもくろんだ〈ワンルームマンション投資〉で大失敗のワケ

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オスカーキャピタル株式会社
世帯年収1,500万円のタワマン暮らし「勝ち組パワーカップル」…老後資産形成をもくろんだ〈ワンルームマンション投資〉で大失敗のワケ

近年よく耳にする「パワーカップル」というワード。一般的には、夫婦共に年収700万~800万円以上、世帯年収で1,500万円以上を得ている夫婦を指すとされています。都市部の駅近タワーマンションを購入し、子どもたちは有名私立校へ…という、典型的な勝ち組のライフスタイルを送るカップルも多いなか、資産形成に失敗し、内情は火の車というケースも相当数存在します。なぜそのような悲劇が起こるのでしょうか?

毎月の手取り収入額「約100万円」のパワーカップルだが…

筆者は仕事柄、日々多くの方から不動産投資の相談を受けています。最近とくに増加しているのが、いわゆるパワーカップルからの資産形成の相談です。一般的なサラリーマン夫婦を大きく上回る収入がありながら、実情を聞くとまさに火の車、絶体絶命といったケースが少なくなく、衝撃を受けています。

 

プライバシーの関係上、実際の相談内容はご紹介できませんが、相談者であるパワーカップルの方々が抱えている複数の問題を、一組のパワーカップルの事例のかたちとしてまとめ、わかりやすく解説していきたいと思います。

 

 

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上場企業勤務+団体職員…佐藤夫妻のケース

佐藤 雄一

年齢:48歳

仕事:通信関係の上場企業に勤めるエンジニア

収入:額面800万円(手取り約600万円、月額50万円)

 

佐藤 真紀

年齢:45歳

仕事:某庁の外郭団体に勤める団体職員

収入:額面700万円(手取り約540万円、月額45万円)

 

〈前提条件〉


夫婦合わせた手取り額は95万円もあるが、固定費等の支出も大きく、右から左にお金が消えてしまう状況。将来の老後生活に不安を感じていた。

 

問題①高属性だったことから、高額なタワーマンションが「買えてしまった」

佐藤家の住居は、5年前に購入した湾岸エリアのタワーマンションです。80平米の3LDKで、購入価格は1億2,000万円でした。

 

家探しをしていた当初、佐藤夫妻は、自分たちには手が届かない物件だと考えていましたが、モデルルームの担当者に「審査が通るか確認してみましょう」といわれて融資審査を受けたところ融資が出ることがわかり、購入を決意。

 

2人とも安定した勤務先の高属性であることから、金利0.5%、返済期間35年と、最優遇の条件でローンを組めることに。月々のローン返済額は35万円、額面の月収(125万円)に対して28%とやや高めでしたが、無理のない範囲だと考えました。なにより湾岸エリアのタワーマンションに暮らす満足感は大きく、2人は「よい買い物をした」と考えていました。

 

問題②3人の子ども全員を、有名私立校で学ばせている

佐藤家には、上から15歳の高校生、13歳の中学生、10歳の小学生の、3人の子がいます。3人とも有名私立校に通い、塾や習い事の費用をあわせた教育費の総額は月30万円です。

 

問題③住宅ローンに学費…可処分所得はごくわずか

佐藤家は、手取り月収が95万円に対し、住宅ローン返済と教育費だけで月65万円の固定支出があります。残りの30万円のなかから、子どもの将来の進学に備えた貯蓄や生命保険代などを支払うと、可処分所得はかなり少なくなります。

 

そのうえ、学校の保護者同士、タワーマンション住民同士といった付き合いにもお金がかかります。佐藤夫妻には、豊かで贅沢な生活という実感はまるでありません。

 

実際、子どもの進学資金以外の貯金はほとんどゼロという状況に。もうじき50歳になることから、老後資金への不安を感じていたところ、同じマンションの住民から投資マンション業者を紹介され、話を聞くことになりました。

 

 

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恐ろしい…「マンション投資」の実態とワナ

上場企業である投資マンション業者は、佐藤さん夫妻にワンルームマンション投資のメリットについて、熱心な説明をおこないました。

 

「世界情勢を見れば、近い将来、日本も利上げでインフレになる可能性が大。インフレに強い実物資産である不動産を持つべきですよ」

 

「マンション価格はずっと右肩上がりとなっており、今後も値上がりを続ける可能性が非常に高いです。投資をするなら早めにしたほうがいいですよ」

 

「安定した家賃収入が年金にプラスされれば、老後の生活が豊かになります」

 

「ご主人に万一のことがあったときも、生命保険の代わりになるので、残されたご家族は安心です」

 

「当初はキャッシュフローがマイナスでも、それは貯金しているようなもの。心配しなくて大丈夫です」

 

「サブリースしますので、空室リスクは安心してください」

 

この説明のあと、業者は「佐藤様ご夫妻なら、7戸の購入が可能」と試算しました。

 

雄一さんと真紀さんは、悩んだ末に、7戸の新築マンションを購入。その総額は2億5,000万円でした。

 

 

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月15万円…マンション投資で生活は「ギリギリの状況」

投資マンションを購入後、家賃収入などからローン返済などを差し引いたキャッシュフローは、1戸あたり約2万円強、7戸の合計で約15万円のマイナスとなりました。その分は給料から支払う「手出し」です。この赤字は、事前のシミュレーションよりも多額でした。佐藤夫妻は「これは貯金みたいなものだから」と言い聞かせましたが、それでも、実際の生活はかなり苦しくなっていきました。

 

居住用住宅ローンの返済と学費支払いの計65万円に加え、投資マンションのキャッシュフロー支出が15万円なので、合計80万円。95万円の給料でも、可処分所得は15万円しかありません。

 

大学進学用の貯蓄などを考えると家計のキャッシュフローがマイナスの月も出るようになり、ギリギリの生活に追われる日々が始まりました。

 

 

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ローン残債が払えず、売るに売れないマンション

雄一さんは、投資額が大きすぎたと感じ、何室か売却しようと検討しました。しかし、買い取り査定をしたところ、買値の約70%の価格しかつきません。総額2億5,000万円で購入したマンションが、1億8,000万円の査定と、約7,000万円ものマイナスです。

 

業者が力説していた値上がりどころか、完全なる赤字です。売ったとしてもローンの残債にはまったく足りず、ローン残債の不足分に充てるお金を別に用意しなければ、売ることもできません。

 

佐藤夫妻は途方に暮れました。

 

 

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パワーカップルでなければ、こんな借金は背負わなかったのに

実際、佐藤夫妻のような状況に追い込まれているパワーカップルは珍しくありません。

 

高い世帯収入を得て、本来なら豊かな暮らしができるはずのパワーカップルが、どうしてこのような苦況に陥ってしまったのでしょうか。

 

それはひとえに、マンション投資業者の話を鵜呑みにし、よく調べることもなく、身の丈以上の投資をした結果です。

 

もし佐藤夫妻が平均的な収入だったなら、これほど無理のある投資をすることはなかったでしょう。もしかしたら佐藤夫妻にも「上位5%に入る世帯収入を得ているのだから、これくらいの投資をしてもいいだろう」という、油断があったかもしれません。

 

パワーカップルだからこそ生まれてしまった悲劇だといえるのではないでしょうか。

 

 

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不動産投資は、正しい知識なしに開始してはダメ!

では、佐藤夫妻は不動産投資をしなければよかったのかといえば、そうではありません。不動産投資は適切に行えば、インフレ対策にも老後資金対策にもなる、有力な資産運用です。


しかし、そのためには「きちんと勉強して身の丈にあった規模で取り組む」ことが大前提です。

 

一方、佐藤夫妻は、

 

●業者に勧められるまま、利益が出ない新築ワンルームマンションに投資した

●一度に7室も購入するなど、いきなり身の丈を超えた投資規模ではじめてしまった

 

といった点で、不動産投資の大前提から外れる投資をしています。苦況に陥ってしまったのは、それが理由です。

 

皆さんが不動産投資を始める際には、正しい知識を得たうえで取り組んでいただきたいと思います。

 

 

オスカーキャピタル株式会社
代表取締役社長 金田 大介

 

取材:椎原よしき