平均寿命と健康寿命の差により生じる「介護」の必要性
厚生労働省は2022年7月に、2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳となっていて、健康寿命(2019年)との差は、男性8.79年、女性12.19年と、発表しました。病気などにかかることなく、健康で自立した生活を送ることができる期間が健康寿命ですので、平均寿命と健康寿命の差は、なにかしら面倒をみたり介護が必要だったり、といった期間を生みます。
認知症を発症した母親を抱える年収1,000万円のAさん
Aさんは57歳の年収1,000万円の部長職です。52歳の妻と高校生と大学生の息子と都心の一戸建てに住んでいましたが、5年前に父親を亡くしたため、実家を売却したあとに84歳の母親を引き取って一緒に暮らしていました。
その後、母親が認知症を発症してしまったあとは、だんだんと妻の負担が重くなり、息子たちの勉強に影響が出始めたことで、施設に入れることを考えはじめました。老人ホームの知識がまったくなかったAさんは、まずは区役所に出向いて相談し、区内の老人ホーム等についていろいろと教えてもらいました。
老人ホームの種類
老人ホームの種類は、公的施設と民間施設にわかれ、種類は次のとおりとなっています。
1.ケアハウス
2.特別養護老人ホーム
3.介護老人保健施設
4.介護医療院(介護療養型医療施設)
1.介護付き有料老人ホーム
2.住宅型有料老人ホーム
3.サービス付き高齢者向け住宅
4.グループホーム
このように、一口に老人ホームといっても種類が多く、入居目的もかかる費用もさまざまです。介護状態によっては入れない施設もありますので、事前に調べておく必要があります。
老人ホームを選ぶ際の基準とは?…Aさんのケース
さて、Aさんですが、お子さんが高校生と大学生ということでお金のかかる時期でもあり、初めは費用面から公的施設の特別養護老人ホームを希望しましたが、
上記の理由から、民間施設を探すことにしました。認知症に手厚い民間施設は、介護付き有料老人ホームとグループホームです。この2つは重度の認知症でも原則受け入れてもらえます。
Aさんのお母さんは今後も認知症は進む可能性もあるため、重度になっても入居し続けられるよう、介護付き有料老人ホームを選択しました。介護付き有料老人ホームは24時間365日介護スタッフが常駐しており、生活相談員やケアマネージャー、看護職員などの専門知識のある人から手厚いサービスを受けられます。グループホームも認知症には手厚いのですが、Aさんの母親は共同生活は苦手だろうと考え、介護付き有料老人ホームを選択することに。
「実家を売却したお金もまだ残っているし、母親の年金(月額約20万円:遺族年金・経過的寡婦加算含む)でなんとか支払いはできるだろう」と考え、さっそくホームを探すことにしました。
介護付き有料老人ホームは、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設のため、介護保険サービスを毎月定額で利用でき、もちろん食事や入浴、排泄などの日常的に必要な介護サービスも提供してくれます。
入所者は「要介護者」である必要がありますが、看取り可能な施設が多く、公的施設の特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)と比較すると、かかる費用は割高となりますが、充実したサービス提供が受けられ、重度の認知症患者でも入居できるのが魅力です。
ですが、当然民間の施設になりますから、事業者ごとに設備やサービス内容も違ってきます。いまはネットで調べれば費用や空き状況もわかりますので、複数の施設を比較し、事前に見学するようにしましょう。