1.実はインフレに弱い「学資保険」
6月に入り、大手電力会社7社が電気料金を値上げしました。さらに、食品も3,575品目が値上げするなど、家計には引き続き大きなダメージとなっています。
このようにさまざまな商品やサービスの価格が上がるなかで、筆者が特に気になっているのは「大学費用」の値上げの可能性です。
国公立大学の授業料・入学料は文部科学省が標準額を定めており、現在のところ入学料が28万2,000円、授業料が年間53万5,800円となっています。これは、授業料は平成17年から、入学料は平成14年から現在に至るまで変わっていません。
しかし、少子化が進み人件費も高騰するなか、この価格が今後大きく上昇することが考えられます。したがって、私立・国公立を問わず学費の値上がりに備え、しっかりと準備しておく必要があります。
お子さんの教育資金の準備というと、「学資保険」が思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。しかし、学資保険は払い込んだ保険料の総額に対する受け取れる満期保険金の低さが気がかりです。
満期金のある保険は、払い込んだ保険料に対してどれだけ受け取れるかという返戻率を計算しておく必要があります。返戻率は、以下の式で求められます。
いまのような超低金利の時代はこの返戻率が低くなっておいるため、商品によっては100%を下回る元本割れの保険もあります。
学資保険には、
・親が死亡した場合、保険料の支払いが免除される
といったメリットもありますが、お子さんの医療費については自治体での助成がありますし、親御さんは別途死亡保険に加入しているケースも多いため本当に必要な保障とは限りません。
40歳で加入すると…
学資保険は、医療保障などのオプションが付くほど返戻率は低くなり、元本割れする可能性が高くなります。また、中学や高校などの入学時の祝い金のように満期前に受け取れるタイプの学資保険は、受け取りまでの運用期間が短くなりますので、返戻率が低くなってしまいます。
さらに、契約者(父親・母親・祖父母など)が死亡した場合には保険料免除となりますので、契約者の年齢が高いほど返戻率は低くなります。
<ある保険会社のケース>
・父親(40歳)、子(0歳)
・保険料:毎月約1万円
・保険料払込期間:18年間
払込保険料総額 約216万円
満期受取金 約220万円
返戻率 101.85%
18年間も頑張って保険料を払い込んでも、わずか4万円しか増えないのは驚きですよね。大変さみしいものがあります。
教育資金を「資産運用でまかなう」という方法も
たとえば、毎月1万円の保険料を18年間払い続ける学資保険では、保険料の支払い総額が216万円ですから、受取金額は216万円以上でないと「元本割れ」となってしまいます。
現在の国立大学で4年間にかかる費用は、以下のとおりです。
値上げを考えて18年後の費用を計算すると、
・インフレ率年1%の場合・・・入学金約33.7万円、4年間の授業料約256.3万円
総額約290.0万円
・インフレ率年2%の場合・・・入学金約40.2万円、4年間の授業料約306.0万円
総額約346.2万円
と、なります。大学費用の資金計画は、まず目標額を設定するところからが重要です。そうでないと、将来、教育ローンや奨学金といった負債を背負うことになります。
教育資金作りのために、必ずしも学資保険に加入しないといけないということはありません。「資産運用で増やす」という選択肢もあります。
たとえば、先ほど例に挙げたある保険会社の学資保険と同様に、毎月1万円(年12万円)を18年間積立運用した場合、次のような結果になります(積立総額216万円)。
・年2%……約257万円
・年3%……約281万円
・年4%……約308万円
・年5%……約338万円
教育資金については、お子さんができたタイミングで目標金額を決め、その後、運用利率や毎月の積立金額を決定し、18年という長期の期間をどのような商品で資金作りをしていくか、しっかりとしたプランニングが必要です。