平均寿命が延びるにつれて、介護を必要とする高齢者が増えている昨今。「親の介護」問題は深刻化する一方です。本記事では、FP1級の川淵ゆかり氏が、認知症を発症した母親の介護に悩むAさんの事例から、老人ホームの費用について解説します。
年収1,000万円の57歳息子が青ざめた…年金月20万円、84歳・認知症母の「老人ホーム入居費用」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

入居一時金、約700万円も…高額な老人ホーム費用に頭を抱えたAさん

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

さて、Aさんは自身の住所区内で介護付き有料老人ホームを探し始めました。そして、その費用の大きさに青ざめます。

 

入居一時金:約700万円 月額利用料:約24万円

 

介護付き有料老人ホームの契約方式の多くで採用されているのが「利用権方式」です。利用権方式とは、居室や共有部分の利用料金と介護や生活支援のサービス料金をパッケージにした方式です。

 

契約後は亡くなるまで権利を持つことができますが、入居者が亡くなると権利は消失するため、家族などが相続することはできません。なお、同じ施設でも支払い方法のプランが複数用意されているため、資産状況や年金額によって選ぶことができます。

 

<例>

・入居一時金:約700万円 月額利用料:約24万円の場合、支払方法には、入居一時金の前払いの負担を減らし、月額利用料を増やす方式もあります。

・入居一時金:約300万円 月額利用料:約29万円

・入居一時金:約0万円 月額利用料:約34万円

 

複数のホームを検討したAさんでしたが、どれも同じような金額で、支払い方法を変えたとしてもとても払える金額ではありません。Aさんは頭を抱えてしまいました。

 

都心に近づくほど高額になる、老人ホーム利用料

さて、この介護付き有料老人ホームの金額ですが、実は地域によって金額は大きく変わってきます。地方ではそれほど高額にはならないのですが、都心に近づくほどやはり金額は上がります。Aさんが住んでいる地域は都心のため、特に金額が高かったようです。また23区でも区により差があります。

 

なお、介護付き有料老人ホームは、住民票がある地域に住まないといけない、という縛りはありません。全国対応している施設も多いため、空き状況により入居を相談してみましょう。

 

これを知ったAさんは、母親の様子をときどき見に行きたかったため、都心から少し離れた郊外のホームを調べ始めました。範囲を広げると、いろいろな介護付き有料老人ホームがあるのがわかりましたが、実際に見学に回り、医療や介護の受け入れ状況などを確認のうえ、次の金額の施設に決定しました。

 

入居一時金:約150万円 月額利用料:約17万円

 

Aさんは、「いろいろと調べましたが、施設によって差があるのはもちろんなんですが、ちょっと都心から離れるだけで入居一時金だけでも数百万円も違うのをみて本当に驚きました。母親のために時間をかけて調べましたが、将来の自分たち夫婦のためにも勉強になりました」と語ります。

 

介護の怖いところは「いつまで続くかわからない」ところです。筆者も十数年間寝たきりの母親の介護の経験がありますが、金銭的にも精神的にもかなり辛いものがあります。電気料金や食料品の値上げや人手不足で老人ホームでの費用も今後は上がってくると思われますから、入居前の比較検討は非常に重要です。また、家族が明るく暮らせるためにも、日頃から健康寿命を延ばせるような工夫もしていきましょう。

 

<参考>

認知症等の相談窓口のご紹介(厚生労働省HPより)

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/a05.html

 

 

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表