政府への「過度な期待」は禁物
以上の経緯を考えると、「資産所得倍層プラン」を打ち出していますが、岸田政権には結局、明確な経済政策がうかがえない感もあります。
一方、安倍政権の「アベノミクス」の場合、資金の流通量とその循環をよくし、「物価上昇」→「企業の売上上昇」→「賃金(家計の所得)上昇」→「消費増大」→「物価上昇」という循環を促すことが狙いだったことが明確にわかります。そしてそれによって、株価も上昇させるという目論見がありました。NISA制度も、安倍政権下でスタートしたものです。
実際に、民主党政権が終わった2012年11月に8,000円台だった日経平均株価は、安倍首相辞任発表の2020年8月には2万3,000円弱となりました。
ただし、すべてが安倍首相の思惑通りにいったわけではありません。本人の意向か、他の誰かの意向なのかは不明ですが、アクセルを踏みながらブレーキを踏むように、任期中に消費税の増税も行いました。物価や賃金の上昇も、道半ばだったように思えます。
結果的に、政府の方針に対する我々の見方は、以下のようにいえます。
・他者の反対などにより、すべてが首相の思うとおりにいくわけではない
・未来を予測して首相は政策を実現しようとするが、その予測が当たるかどうかはわからない
したがって投資家は、政府の方針に過度に左右された売買は避けるほうが賢明です。
「ああ言ってるけど、実現するかどうかはわからない」「こう予想されてるけど、そのとおりになるかどうかわからない」と常に疑いの気持ちを持っておき、どんな事態にも対応できるよう、自分の投資手法を磨いておきましょう。
岸田政権の「資産所得倍増プラン」に対しても、その成果に期待しつつ、一方で期待外れに終わる可能性も考えておいたほうがいいでしょう。
株式会社ソーシャルインベストメント 取締役CTO
川合 一啓