2.20・30代のうちは安くても…老後負担が大きくなる生命保険
FPである筆者が絶対に入ってはいけないと思う保険のふたつめは、「老後の負担になるであろう保険」です。
テレビなどでもよくCMが流れていますが、いま保険料が手頃で保障内容がシンプルな「ネット保険」が人気です。なかには、保険料が月々数百円というものもあるようです。
若いうちは死亡や入院の確率が非常に低いため、保険料は、若いときに加入するほど安くなります。また、さらに保険料を抑えたい方は、保険を「期限付きの定期」にすることで、保障期間を若いあいだに限定することができます。
しかし、このようにして「安いから」と加入した保険も、保障期間が切れると「更新」となり、このタイミングで保険料がアップしてしまいます。
今後のインフレや社会保障制度を考えると、老後の家計はできるだけ出費を減らすようにプランニングしていかなければいけません。住宅ローンの返済もそうですが、生命保険も同じです。
日本国内の年齢別生存率をみると、下記のようになっています。
■年齢別生存率※(図中左側:男性、右側:女性)
60歳時点……93.26%/96.43%
65歳時点……89.73%/94.95%
70歳時点……84.25%/92.75%
75歳時点……76.03%/89.29%
80歳時点……64.37%/83.66%
85歳時点……48.20%/73.79%
90歳時点……28.08%/56.90%
※ 厚生労働省「第23回生命表(完全生命表)」をもとに筆者が作成
そして下記は、ある保険会社が販売する生命保険の一例です。
■死亡保険:500万円(保障期間10年)※掛け捨て
【加入時年齢】
25歳男性……毎月約1,000円
35歳男性……毎月約1,200円
45歳男性……毎月約2,000円
55歳男性……毎月約3,800円
65歳男性……毎月約8,000円
75歳男性……毎月約2万4,000円
■死亡保険(ネット専用):500万円(保障期間10年)※掛け捨て
【加入時年齢】
25歳男性……毎月約600円
35歳男性……毎月約800円
45歳男性……毎月約1,500円
55歳男性……毎月約3,400円
65歳男性……毎月約8,000円
75歳男性……申し込み不可
上記をみると、70代以降に保障の必要性が高まるにもかかわらず、更新型の保険では、「いちばん必要なときに保険料が高くなって加入を継続できない」あるいは「入りたいけど入れない」といった状況になってしまうことがわかります。さらに掛け捨て型の場合、途中まで掛けた保険料は無駄になってしまいます。
比較のために、解約返戻金があるタイプの終身保険の保険料をみておきましょう。
■死亡保険:500万円(終身保険)※解約返戻金あり
【加入時年齢】
25歳男性……毎月約9,000円(60歳払い済み)/毎月約5,800円(終身払い)
35歳男性……毎月約1万3,500円(60歳払い済み)/毎月約7,300円(終身払い)
45歳男性……毎月約2万4,000円(60歳払い済み)/毎月約9,700円(終身払い
55歳男性……毎月約3万8,600円(65歳払い済み)/毎月約1万3,600円(終身払い)
65歳男性……毎月約4万2,300円(75歳払い済み)/毎月約2万500円(終身払い)
75歳男性……毎月約5万1,000円(10年払い済み)/毎月約3万5,400円(終身払い)
終身払いとなると亡くなるまで払い続けないといけませんから、定年後の入院や介護でお金がかかる時期と重なると、負担が大きくなる可能性があります。
したがって、若いうちに加入し、定年までに保険料の支払いが完了するような加入の仕方がおすすめです。
なお、十分に資産のある方は死亡保険に無理に加入する必要はありません。相続税対策で死亡保険を活用するケースもありますが、超低金利の時期、保険料は高くなるものです。それぞれの事情に合わせ、必要性を十分考慮して加入を検討しましょう。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表