サラリーマンのAさんは、係長への昇進を機に憧れだったマイホームを40歳で購入しました。余裕を持って組んだ毎月の返済額に安心していたAさんでしたが、70歳で恐ろしい事態に……。本記事では、Aさんの事例とともに、住宅ローンの返済計画についてFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
月収40万円のサラリーマン、40歳で係長昇進!「夢のマイホーム」購入も…70歳で頭を抱える驚愕の「住宅ローン残債額」【FPが解説】  (※写真はイメージです/PIXTA)

めでたく係長に昇進!40歳で憧れのマイホームを購入したAさん

(※写真はイメージです/PIXTA)
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Aさんは中小企業で係長を務める40歳のサラリーマンです。37歳の奥さんと小学1年生の息子さんと2LDKの賃貸アパートで暮らしていました。係長に昇進して収入が上がったことと、子供も大きくなり住まいが手狭になってきたことから思い切って一戸建てを新築することに決めました。

 

住宅ローンは、借入額3,000万円40年の変動金利型ローン(0.5%)で、毎月の返済額は68,971円となりました。毎月のこの返済額は、いまの賃貸アパートの家賃よりも安いくらいです。Aさん夫婦は

 

・お子さんの教育費にこれからお金がかかってくる

・老後の資金も貯め始めなくてはいけない

 

と考え、「毎月の返済額はできるだけ抑えたい」と思っていました。

 

住宅メーカーの相談会でこの希望を伝えると、「変動金利型ローンは固定金利型ローンよりも返済額は低くなりますし、いまは40年ローンを出している金融機関も増えてきました。このくらいの金額なら年金生活に入ってもなんとか出せるんじゃないですか?」との説明をされました。

 

Aさん夫婦は「この返済額なら、払っていけそうだね」と話し合い、一戸建ての新築を決める運びとなりました。しかし、Aさんが住宅ローンの返済が始まった直後から「変動金利の金利はそのうち上がるのではないか?」「食料品値上げ! 光熱費アップ!」……こうした噂やニュースをネットやテレビでよく見るようになります。

 

慎重に住宅ローンを決めたつもりのAさんも心配になってきました。「我が家の住宅ローンは大丈夫なんだろうか?」

低金利だけではない…ローン返済額が少ない本当の理由

(※写真はイメージです/PIXTA)
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日本は超低金利が続いていますが、返済額が少ないのは金利が低いせいだけではありません。返済期間を長くすることにより、毎月の返済額が少なくなっています。ちなみに、昭和の時代では25年ローンが主流だったのが、その後35年ローンが出てきて、いまでは40年ローン、50年ローンという長期ローンまで出てきました。

 

住宅着工件数は景気動向を見るためには重要な指標となっています。新築住宅の着工が活発化すると、家具や家電の買い替えにもつながっていくため、非常に重要な指標です。材料費や人件費の値上がりで、家の値段も高くなっていますが、できるだけ多くの建設・販売を進めるためには、返済しやすい金額での住宅ローンは重要です。

 

しかしながら、長期ローンは返済額が下がっても将来「返済できない」といった住宅ローン破産者を増やしてしまうことにもなりかねません。住宅ローンの利用者は、目先だけではなく、将来のことまで考えて長期ローンを利用する必要があります。

 

ちなみに、Aさんのように3,000万円(年0.5%)の住宅ローンを返済期間で比較してみると、

 

・25年ローン:毎月の返済額 106,401円 総返済額 約3,192万円

・30年ローン:毎月の返済額 89,757円 総返済額 約3,231万円

・35年ローン:毎月の返済額 77,876円 総返済額 約3,270万円

・40年ローン:毎月の返済額 68,971円 総返済額 約3,310万円

 

以上のような差が出てきます。