FXをはじめ、資産運用では「長期投資はローリスク」「投機(短期取引)はハイリスク」が常識とされています。しかし、登録者数20万人超えのYouTuberで『日利1%FX 鉄壁の不動心トレード』(KADOKAWA)著者のNOBU塾氏は、複数の理由から「長期=安全、短期=危険はまったくの誤解」といいます。それはなぜか、詳しくみていきましょう。
投資の常識「長期は安全」「短期は危険」が“まったくの誤解”といえるこれだけの理由

iDeCoやつみたてNISAはローリスクという誤解

FXには数か月から数年という長期にわたってポジションを持ち続ける長期保有から、数日から数週間持つスイングトレード、1日で取引を終わらせるデイトレード、そして数秒から数分で完結させるスキャルピングトレードと、さまざまな時間軸で取引をしているトレーダーがいます。

 

一般的には、長期保有が最もリスクが低く、保有期間が短くなるほどリスクが高まると考えられていて、スキャルピングトレードにいたってはギャンブラーがやることだと思われているようです。

 

確かに、アベノミクスが始まった2012年末ごろに米ドル円や米国株を買って10年ほったらかしにしていた人は、何もしなくても今ごろは大きな利益を上げてウハウハしていることでしょう。このことをもって、「やはり長期保有が最強だ」と感じている人もいるかもしれません。

 

しかしこれは、たまたまこの10年で大きく円安や株高が進行したからそうなっただけの結果論に過ぎません。もし逆の方向に動いていれば、10年かけて大きな損失を育て上げていたことになります。そして、次の10年をさらに待ち続けたとしても、回復できる保証はありません。

 

僕はかつて野村證券に勤務しており、企業型確定拠出年金を担当していた時期がありました。企業型確定拠出年金は、この制度を採用する企業で働く人たちが、自分で日本株や外国株などを対象とする投資信託の中から投資先を選んで退職金を積み立てていく長期積み立て投資です。

 

最近はiDeCo(個人型確定拠出年金)が有利な老後資金形成法として注目されています。iDeCoは自分で積み立て資金を出すのに対し、企業型確定拠出年金は会社がお金を出してくれるという点が異なりますが、基本的な仕組みは同じです。

 

当時、この制度を利用して何十年も積み立て投資を続けてきた担当企業のベテラン社員の退職金が、2008年のリーマンショックによる株価の大暴落でいきなり40%も減ってしまったのを目の当たりにしました。

 

当時は僕自身も、長期の積み立て投資はリスクが低いと考えていて、顧客にもそう説明してきただけに、大きな衝撃を受けました。

 

この暴落の渦中で退職を迎えた人は、たまたま悪い時期にあたって退職時の資産がほぼほぼ半減しましたが、この年に入社して積み立て投資を始めた人は今ごろ大きな利益を出しているでしょう。

 

積み立て投資や長期投資を否定するつもりはまったくないのですが、これらの手法は常に自分ではどうすることもできない外部環境に結果が左右されやすい投資であることは、疑いようのない事実なのです

 

以前、老後の生活には夫婦で2,000万円の蓄えが必要であるとする内容のレポートを金融庁のワーキンググループが発表したことが波紋を呼びました。それを契機(けいき)に、それまで投資経験がまったくなかった人が、iDeCoやつみたてNISAで長期積み立て投資を始める例が増えています。

 

それはおそらく、「短期投資はリスクが高いが、長期投資は安全」という思い込みから来ているのでしょう。しかし、僕は証券会社時代のこの経験を通して、自分で結果をコントロールできない長期投資に依存し過ぎるのは危険だと確信するようになりました