奪い合うのではなく、「分け合い・育てる」…筆者が気づいた「利他トレード」の重要性
僕の日利1%トレードのエッセンスをまとめることができた今、ひとつのキーワードに凝縮して締めくくることができることに気づきました。それが「利他トレード」です。
利他とは利己の逆であり、自分だけでなく他者の幸せを求める精神です。自己中心的ではないトレードが、トレードを継続するためには必要なのだと気づいたのです。
またきれいごとを言っている、説教じみたことを言い出した、と思う人がいるかもしれません。そもそもFXはゼロサムゲームの世界なのに、そんな利他の精神なんて発揮していたら自分が身ぐるみはがされるだけではないか、という反論もあるでしょう。実際の例を使って説明します。
[図表1]のチャートは、利己的なトレードの典型例です。天井で売って大底で決済する理想のトレード、まさに神的トレードのように見えますが、これは自分だけが利益を独占する利己的なトレードです。
[図表2]のチャートは、利他的なトレードです。どこが利他的なのかというと、自分が利益確定した後で同じ方向のエントリーをした人でも、利益を出せるトレードだからです。
相場の上から下まで取り尽くし、富を独占するのではなく、その後に続くトレーダーにも利益を出せるよう早めに手仕舞いするトレードです。
FXは限られたパイを市場参加者が奪い合うゼロサムゲームであることは事実ですが、実は我々が普段目の当たりにしている人間が生きる世界すべてがゼロサムゲームといっても過言ではありません。
世界中の誰もが限られた資源を地球から分けてもらいながら日々の暮らしを営んでおり、日本では人口減少で縮小する市場のパイをたくさんの企業が奪い合っています。スポーツもビジネスも学問の世界も誰かが勝てば誰かが負けており、その敗者は敗北の経験を経ていずれ勝者に成長し、そのゼロサムゲームから学びとった経験をもとに後輩や後継者などの次世代を育てる立場を授かっていきます。
近年はビジネスの世界でもSDGsの概念が浸透し始め、限られた市場のパイや資源を奪い合うのではなく、分け合い育てていこうという風潮が活発化してきました。実際、優秀な人材を採用し、業績を伸ばす企業の多くは、社会から求められる役割をまっとうし、よりよい社会づくりに貢献しようとする企業が中心となってきています。
日利1%の小さな利益をコツコツと積み重ね、大きな利益は狙わない。エントリーは保守的に、利益確定と損切りは積極的に行い、必要以上に利を伸ばさない。
このトレードは、トレーダー自身が長く生き残っていくための手法であると同時に、多くのトレーダーがともに生き残っていくための手法でもあるのです。