投資の神様といわれるウォーレン・バフェットをはじめ、投資の世界に存在する「偉人」たち。そのような一流の投資家が「〇〇社の株を買った」と聞くと、思わずマネしたくなる人も多いのではないでしょうか。では実際のところ、こうした投資判断は有効なのでしょうか、株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が、ウォーレン・バフェットの逸話を交えて解説します。
銘柄選びで「ウォーレン・バフェットが買ったから」は正解?投資のプロが回答 (※写真はイメージです/PIXTA)

若きウォーレン・バフェットの「失言」

「グレアムが買ったから」と答えて「ワン・ストライク!」と言われた若きバフェット

今回のテーマについて、象徴的なエピソードをまずご紹介します。しかもそれは、バフェット自身のエピソードです。

 

学生時代のバフェットが、自身が株主であったマーシャル・ウェルズという会社の株主総会に出席しました。

 

そこで彼は、グレアムの盟友であるルイス・グリーンという人物と出会います。ちなみにグレアムはバフェットの師であり、当時二人はまだ会っていませんでしたが、彼の著書を読んでバフェットは深い感銘を受けていました。

 

グリーンはバフェットをランチに誘ってくれ、その席で彼は「どうしてマーシャル・ウェルズを買った?」とバフェットに尋ねました。

 

そこで彼が「グレアムが買ったから」と答えると、グリーンは「ワン・ストライク!」と言いました。

 

そこで、彼の「自分の頭で考えろ」というメッセージにバフェットははっと気がつきましたが、その目つきと言葉は一生忘れられない、とも述べています。

 

以上のエピソードは、アリス・シュローダー『スノーボール ウォーレン・バフェット伝』から抜粋しました。ただしバフェットは、自分なりの考えも持ったうえで同社株を買ったが、それは口にしなかったそうです。

 

たとえ自分にとっての英雄・グレアムであっても、「彼が買ったから」という理由で株を買ってはいけない。それは自分で考えなければいけない。彼がその時にそう学んだように、我々も「バフェットが買ったから」という理由で株を買うのは避けるべきなのではないでしょうか。

優良で価格も安い銘柄が多い日本株

自分なりに調べていればわかるはずですが、2023年4月の時点で、日本株には優良で価格の安い銘柄がたくさんあります。米国株と比べて将来の成長性を不安視されて割安なのかもしれませんが、それを差し引いても「買い」だと判断できる銘柄は少なくないように思えます。

 

バフェット来日以前に、日本株は、安く・お買い得な状態が続いていたといえるのです。

 

ですからそう考えてすでに投資をしていた人は、「バフェットが来た。これで日本株が見直されれば、自分の保有株も大きく上がるな」と喜んでいることでしょう。そしてそういう人は、これからバフェットが買うであろう日本株を予想しよう、などとは考えないのではないでしょうか。

 

安いうちに買っておくのが、利益を最大化する方法です。バフェットが気づかぬうちに優良割安株を買ってしまうことで、それが実現できるのです。