大手企業に勤める、世帯年収1,700万円のA夫妻。これまでお金に困った経験はなく、生活費を正確に計算したことはありませんでした。そのようななか、ふと老後いまの生活水準で暮らせるか気になり、定年を前にFP事務所へ相談に訪れた2人。FPによるシミュレーションの結果「驚きの事実」が判明します。FP Office株式会社の石井悠己也氏は、2人にどのような助言を行ったのか、みていきましょう。
世帯年収1,700万円の59歳・共働き夫婦「なんとかならないか」…ねんきん定期便をみて愕然とした“老後の赤字額”【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳で退職した場合…「毎年500万円の赤字、67歳で破産」の末路

ここまで、A夫妻の普段かかっている生活費・住宅費・もらえる年金額をみてきましたが、定年退職後、いまの水準のまま生活を続けていくことは可能なのでしょうか。

 

【収入】
年金……406万円(手取り約360万円)

 

【支出】
生活費……646万円(月53.8万円)
住宅費【完済前】……295.2万円
住宅費【完済後】……60万円(ただし、将来的に増加の可能性あり)

合計:住宅ローン完済まで→941万円、住宅ローン完済後→706万円

 

このようにみると、住宅ローン完済までは少なくとも毎年500万円以上の赤字になることがわかりました。これでは、老後破産を免れません。

 

そこで、現在の状況をふまえ、簡易的なキャッシュフローとライフプラン表を作成しました。

 

出所:筆者作成
[図表2]A夫妻の現預金額の推移① 出所:筆者作成

 

出所:筆者作成
[図表3]A夫妻の現預金額の推移② 出所:筆者作成

 

来年以降4,000万円の退職金が入ってくるため、一時的には5,500万円近い世帯資産となりますが、[図表2]をみると退職後もいまの生活を続けていくと67歳で資金が枯渇することがわかります

FPが解決策を提示も、2人の反応は…

解決策はいたってシンプルです。収入(資産)を増やすか、支出を減らすかです。筆者は、ここまでの試算をもとに下記の4つの解決策を提示しました。

 

1.60歳以降も収入を維持するために仕事を継続する(収入を増やす)
2.生活費、固定費を見直す(支出を減らす)
3.住み替えを検討(支出を減らす)
4.退職金を少しでも運用して将来に備える(資産を増やす)

 

しかし、ここまで贅沢三昧をしながらも、なんとか生活できてきたお2人は、老後破産の未来がイメージしづらいのかその反応は重たいものでした。

 

「生活水準を落としたくない」

「周りにどう思われるかがこわい」

「なんとかならないか?」

 

なんとかするための解決案なのですが、どうにも受け入れられない様子です。しかし、もう退職直前とあっては取れる方法も限られてきます。

 

一度定まった生活水準を下げることは、想像以上に苦痛を感じるものです。せめてあと数年気がつくのが早ければ、そこまで苦痛に感じない解決策もあったでしょうが……。こうなってしまっては、やれることからやっていくしかないのです。

 

老後の資金について考える場合、シミュレーションは早めに実施することをおすすめします。

 

 

石井 悠己也

FP Office株式会社

ファイナンシャルプランナー