60歳で退職した場合…「毎年500万円の赤字、67歳で破産」の末路
ここまで、A夫妻の普段かかっている生活費・住宅費・もらえる年金額をみてきましたが、定年退職後、いまの水準のまま生活を続けていくことは可能なのでしょうか。
【収入】
年金……406万円(手取り約360万円)
【支出】
生活費……646万円(月53.8万円)
住宅費【完済前】……295.2万円
住宅費【完済後】……60万円(ただし、将来的に増加の可能性あり)
合計:住宅ローン完済まで→941万円、住宅ローン完済後→706万円
このようにみると、住宅ローン完済までは少なくとも毎年500万円以上の赤字になることがわかりました。これでは、老後破産を免れません。
そこで、現在の状況をふまえ、簡易的なキャッシュフローとライフプラン表を作成しました。
来年以降4,000万円の退職金が入ってくるため、一時的には5,500万円近い世帯資産となりますが、[図表2]をみると退職後もいまの生活を続けていくと67歳で資金が枯渇することがわかります※。
FPが解決策を提示も、2人の反応は…
解決策はいたってシンプルです。収入(資産)を増やすか、支出を減らすかです。筆者は、ここまでの試算をもとに下記の4つの解決策を提示しました。
2.生活費、固定費を見直す(支出を減らす)
3.住み替えを検討(支出を減らす)
4.退職金を少しでも運用して将来に備える(資産を増やす)
しかし、ここまで贅沢三昧をしながらも、なんとか生活できてきたお2人は、老後破産の未来がイメージしづらいのかその反応は重たいものでした。
「生活水準を落としたくない」
「周りにどう思われるかがこわい」
「なんとかならないか?」
なんとかするための解決案なのですが、どうにも受け入れられない様子です。しかし、もう退職直前とあっては取れる方法も限られてきます。
一度定まった生活水準を下げることは、想像以上に苦痛を感じるものです。せめてあと数年気がつくのが早ければ、そこまで苦痛に感じない解決策もあったでしょうが……。こうなってしまっては、やれることからやっていくしかないのです。
老後の資金について考える場合、シミュレーションは早めに実施することをおすすめします。
石井 悠己也
FP Office株式会社
ファイナンシャルプランナー