高齢化の進行により要介護者も増加。それに伴い介護を理由に会社を辞めてしまう「介護離職」も増加する懸念が広がっています。特にまだ働き盛りというタイミングで会社を辞め長期介護となった場合、新たな悲劇が生まれることに。見ていきましょう。
年金月14万円・70代親の介護に、40代ひとり息子の悲鳴「もう、疲れました…」気づけば年金世代、老後崩壊の悲劇 (※写真はイメージです/PIXTA)

長期介護の末、自身も年金世代に…介護離職の成れの果て

一方で、生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』(2021年)によると、介護に要した期間の平均は5年1ヵ月。ボリュームゾーンは「4〜10年未満」で31.5%ですが、「10年以上」も17.6%に及びます。

 

もし「いずれは復帰しようと」考え、40代で親の介護のために離職した場合、その親は60代後半から70代ほどでしょうか。平均寿命から逆算すると、長期介護になる可能性は十分にあるでしょう。

 

60代後半であれば厚生年金は平均月14.0万〜14.5万円、70代で平均14.1万〜14.9万円。親の年金が平均的なものであれば、最低限の介護サービスは受けられ、金銭的な不安はなさそうです。

 

ただ親の介護のために離職した独身の40代男性、さらに介護は長期間に及び……。「もう、疲れた」と弱音を吐いても、単身者であれば周囲には頼れる人も少ないでしょうから、追い詰められるケースも多いといいます。在宅で介護する人のためのサポートも広がりつつありますが、十分とはいえません。

 

さらに心配なのが、介護がひと段落した後の介護者の生活。40代で介護離職し、気づけばこちらが年金をもらう世代に。そうなったとき、実際にいくらぐらいの年金を手にできるのでしょうか。20歳から会社員として働きはじめ60歳で定年退職。その間、サラリーマンの平均的な給与を手にしてきたとすると、65歳から手にできる年金額は厚生年金部分は9.8万円。国民年金と合わせると16.4万円ほどになります。一方、40代ギリギリ、49歳で介護離職をしたとすると、厚生年金部分は3万円減の6.9万円。国民年金と合わせると13.5万円ほどになります。

 

年金月3万円の差は、非常に大きいもの。総務省『家計調査』によると、単身高齢者の1ヵ月の支出は14万円ほど。最後まで勤め上げたなら、年金(手取り額)だけで暮らしていける水準です。一方、49歳で介護離職して年金受給年齢に達してしまうと、毎月3万円の赤字となる計算。1年で36万円、10年で360万円、20年で760万円……長生きすればするほど、その差を実感することでしょう。

 

また自身に介護が必要になったときのことを考えると億劫になります。単身者であれば身近に頼れる人がいないということも珍しくなく、施設への入居も検討となるでしょう。そうなると、金銭的な不安はさらに大きくなります。

 

厚生労働省は「介護に直面しても仕事を続ける」意識が重要だといいます。確かに、家族の介護となると、誰にも相談せず介護離職を決めてしまい、経済的にも精神的にも肉体的にも追い詰められることもあります。まずは自身の会社でどのようなサポートを受けられるのかを調べるとともに、高齢者の生活を支える「地域包括支援センター」やケアマネージャーなどにも相談。仕事と介護を両立する術を検討することが大切です。